03 再会

馬車を降りると、雨はほとんど上がっていた。
ホグワーツ城。星空を背負ってたちそびえる姿に、リーマスは足を止める。
いとおしい。だが、それ以上に哀しくて、こわかった。
ふと笑みがこぼれる。これではまるで、もう一度、ここに入学しにきたみたいだ。
リーマスの周りを、後から来た生徒たちが追い越し、正面玄関へ向かっていく。すでに疲れきっている者も、まだまだ元気そうに走っていく者も、宴会のご馳走を楽しみにしているのだろう。
リーマスも、その流れについて行ったが、やけにくたびれたような身なりは、どうにも目立っていた。彼の前を歩く、三人組の女子生徒が、ちらちらと後ろを振り返っては、顔を寄せ合い、小声で言葉を交わし合う。リーマスが「闇の魔術に対する防衛術」の新しい先生だと、気づいているのだろう。右端の女の子と目が合ったとき、微笑みかけると、顔を赤くして、ぷいっと前を向いてしまった。歩調が速くなり、三人組はあっという間に見えなくなってしまった。
うまく笑えてなかったのだろうか、とリーマスはひどく心配になった。

正面玄関に続く石段が近づいてきたあたりで、急に混雑してきたと思ったら、そこで立ち止まっているハリーたちを見つけた。人の流れの妨げになっているにもかかわらず、彼らは周囲などまったく気にかけていない様子で、しかも新学期早々、穏やかではない空気を発している。
ハリーとにらみ合っている少年は、身体が大きな友だちを左右に従えている。三人はスリザリン生らしかった。聞こえてくる会話から察するに、汽車での出来事について、ハリーをからかっているようだ。

「どうしたんだい」

声をかけると、彼らが一斉に振り返る。青白い顔をした、スリザリンの男子生徒は、あとで彼女から聞いたところによると、ルシウス・マルフォイの息子だという。なるほど、と納得してしまうような、相手を見下した遠慮のない目が、リーマスを見た。

「いいえ、なにも」

笑い方まで父親にそっくりな少年は、慇懃無礼な態度で、その場をあとにしようとした。手で軽く合図をすると、彼の左右に立っていた友だちもあとに続く。友だちというより、手下に近い扱いらしい。
立ち去っていくマルフォイたちの姿を睨んでいるハリーに、声をかけようとしたとき、すぐに、「痛いじゃないか」と非難する、マルフォイの声が聞こえてきた。

「マルフォイ? びっくりした。ずいぶんと背が伸びたね」
「うるさいな。ちゃんと前を見て歩けよ」
「ごめん。人を探していて…」

マルフォイが身体を避けた先に、彼女が立っていた。

先へ行こうとする彼に、「あとでね」と声をかけて、また「うるさい」と言い返されているが、それが彼らなりの挨拶なのか、彼女はマルフォイの態度をまったく気にしていない様子で、前に向きなおす。そして、目が合った。
リーマスに気づいた瞬間、彼女が息を呑む。

こわかった。不安だった。
この瞬間まで、自信がなかった。
でも、会いたかった。彼女を一目見たら、その思いだけが、リーマスの胸に溢れた。

リーマスは一歩、前に出て、無意識に腕を持ち上げていた。ほぼ同時に、その伸ばしかけた腕の中に、彼女が飛び込んでくる。
「リーマス」とうれしそうに自分を呼ぶ声が、胸に響く。それっきり、ふたりはただお互いを強く抱き締めた。 彼女は、最後に見たときから、ほんとうに、なにひとつ変わっていない。
首元に顔をうずめる。彼女の存在を感じる。このまま泣き崩れそうになる。

私は、きみに、すごく会いたかったんだ。

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