06 不思議なひと

廊下を歩いていると、ハリー、ロンと楽しげに話している、ハーマイオニーを見かけた。三人は、ハロウィンの一件以来、仲良くしているそうだ。
彼女は、並んだ三人の背中に目を細め、反対方向へ歩きだす。しかしすぐ、背後からハーマイオニーに声をかけられた。

「どこかへ行くところ?」
「地下牢に」

手に持っていた書類を見せるように持ち上げる。「マクゴナガル先生に頼まれて、スネイプ先生の部屋まで」

ハリーとロンが、とたんに顔を歪め、舌を出した。誤ってまずいものでも食べたような反応だった。
「どうしたの」彼女が訊ねる。
「スネイプは、グリフィンドールが大嫌いなんだ」
ロンが真っ先に答えた。見ると、ハーマイオニーも険しい顔をしている。
「とくに、僕は毎回、授業で減点される」ハリーは自嘲気味に言った。「なぜか僕が憎いみたい」
彼女は眉を困らせて、ハリーに同情した。
スネイプは片足がもげかけても、意地でも助手を頼まないし、実際の授業風景を知りようもない。新学期からずっと避けられているので、彼がどんな授業をしているのかたとえ興味があっても、だ。

「スリザリンをえこひいきするのよ、とってもあからさまに」
「そうさ、とくにあのマルフォイがお気に入り」
「そのときのマルフォイの得意顔ったら、ないよ」

しかし、この評判では、あんまりいい授業でもなさそうだ。
「魔法薬学を知り尽くしている、優秀な先生だよ」と彼女が言っても、「たぶん、そもそも先生に向いてないよ」と否定された。
私も、そうおもう、とは口にして言えなかった。
突然、ロンが両手のひらを打ち合せた。表情が明るくなり、赤毛の頭上で、見えない豆電球がぴかっと光ったみたいだった。

「彼女なら、知っているかもしれないぜ」

あとの二人も、遅れながら、あっという顔を見合せる。
「…なにを?」首を傾げると、三人はやっと長い洞窟の出口を見つけたような期待を込めて、訊ねてきた。

「ニコラス・フラメルって、どこかで聞いたことがない?」

彼女は、なにを訊かれたのかすぐにはわからなかった。

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