09 リータの取材

ハリーが対抗試合の代表選手になったことに、みんなが慣れてさえくれれば、状況も少しはマシになるだろうと考えていたハリーだったが、そんな考えはルーピン先生のチョコレートより甘かった。
廊下を歩くとまるで、特大の尻尾爆発スクリュートを二本足で歩いているような目で見られ、不特定多数の視線を常に感じるのに、振り返ると一斉に目を逸らした気配だけが残る。
懐かしさを感じてしまう。二年生のとき、ハリーがほかの生徒を襲っていると周りから疑われたあの数ヶ月を、彷彿とさせた。
だが今回は、親友のロンまで、ハリーがただの目立ちたがり屋だと信じてきっている。ハリーはつらかったけれど、ロンが自分の間違いを認め、そしてハリーに謝るまでは、自分から話しかけるつもりはなかった。
四方八方から冷たい視線の的になり、親友だと思っていた相手にも信じてもらえず、いつまでも慣れない苦痛に、ハリーはうんざりさえしていた。

「ハリー、だれがおまえの名前を入れたのか、わかんねぇのか?」

魔法生物飼育学の時間、ハグリッドがハリーを近くに呼び寄せてから、こそっと訊いてきた。
ほかの生徒は、運動不足のスクリュートに引き綱を結び、校庭の芝生を逆に引きずられるようにして、散歩している。

「それじゃあ、僕が入れたんじゃないって、信じているの?」

ハリーは、不貞腐れたような、思いのほか、ぶすっとした声になった。ハグリッドへの感謝の気持ちが込み上げてきたが、それを隠そうとしたからだ。

「もちろんだ」
「嬉しいよ、ハグリッド」
「おまえが自分じゃねぇって言うんだ。俺はおまえを信じる」
「僕、僕の味方はいないんじゃないかって思ってた」
「なにを言う。俺だけじゃねぇ。彼女もハリーの言うことを信じてるぞ」

意味ありげな視線を、ハリーの後方へ放った。
振り返る。少し遠いけれど、彼女が野菜畑の外に立っているのが見えた。スクリュートを連れたマルフォイと、話をしている。
ハグリッドの小屋と野菜畑の距離は、風に乗ってふたりの会話が聞こえてくるほどではない。
別段、親しげというわけではなかったが、マルフォイとふつうに話している彼女を見て、失望したような、悲しいような、暗い気分になる。そんなハリーを見透かしたかのように、ハグリッドが、「彼女はここの生徒のころっから、寮で贔屓しねぇんだ」と慰めるようなことを言った。

マルフォイの足元にいる、いまや体長一メートルを越え、分厚い鎧を纏う巨大なサソリかカニみたいなスクリュートに、彼女が畑のニンジンをやろうとしているようだった。口を探しているようだ。
マルフォイが指を差したあたりに持っていくと、ニンジンは丸呑みされて、あっという間に消える。彼女は、マルフォイを見上げて、笑みを向けていた。
立ち上がり、彼女が仕事に戻る。だが、マルフォイは、なかなかスクリュートの散歩に戻らなかった。寒さのためか、畑のほうを何度も振り返る青白い頬が、いつもより紅潮しているような気がする。
ふと、自分を睨んでくるハリーの視線に気づいたマルフォイは、睨み返してくることなく、居心地が悪そうに目を逸らして、城のほうへスクリュートを引きずっていくのだった。

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