06 代表団の到着

ホグワーツ城の前で整列させられた生徒たちは、だれもが期待に胸を膨らませ、興奮し、薄暗さが増す校庭をあちらこちらと眺めていた。
よく晴れた、肌寒い夕方だった。寒そうに自分の腕を擦る者も、代表団の到着を心待ちにしている。

「ウィーズリー、帽子が曲がっています!」

マクゴナガル先生のよく通る声がする。

「そこ! 髪についている、バカげたものをお取りなさい」

注意はなかなか止まなかった。
フィルチの足元に、ミセス・ノリスが身体をすり寄せてくる。フィルチは腰を屈め、愛猫の小さな頭を撫でてやる。本当は抱いてやりたいが、一張羅が毛だらけになったら、マクゴナガル先生になにを言われるかわからない。
身体を伸ばしたとき、石段の上に立つフィルチから、生徒たちのなかに赤い頭髪がふたつ、並んでいるのが目についた。
ウィーズリーの双子だ。彼らは、今学期がはじまってから、まだ一度も悪戯を起こしていない。改心したようには見えず、なにか他のことに夢中になっているらしかった。瓜二つの顔を突き合わせ、隅でこそこそと話している場面を、何度か見かけことがある。どうせろくでもないことを相談しているのだろう、と常時、警戒はしている。
彼らも、もう上級生だ。進路相談や試験勉強で忙しいはずだろうに、とフィルチは心配になる。留年なんてされたら、たまったものではない。
「ふん」と鼻を鳴らす。
ノリスがしつこく寄ってくるので、根負けしたフィルチが抱き上げようとしたとき、彼の視界に、背後から伸びる、人影が入りこんだ。
顔をあげる。校舎から出てきた彼女が、フィルチの横で足を止めた。
渋々しい顔で一息をついた彼女は、だれかを探しているのか、校庭を見渡し、それからフィルチのことを見た。

「ビーブスを見ませんでしたか」
「やつがまた、やったのか」

彼女が眉を困らせる。暗黙に、どうしようもない、と言っているようだった。
この日を迎えるまで、フィルチもだが、彼女も散々だった。城中の掃除や、飾りつけ、ホグワーツ城が代表団を歓迎しようとすればするほど募る、ビーブスの嫌がらせに辟易していた。
禁じられた森の上に、青白く透き通る月が輝いている。

「そこも!」

静かになっていたマクゴナガル先生の厳しい声が、突然飛んだ。
フィルチはドキッとした。列の先頭にいる先生の目が、生徒の頭を越えてこちらを睨み、さらには指まで差していたのだ。

「きちんとボタンをお閉めなさい!」

隣を見る。先生の声が届く範囲の生徒が、つまりほとんどの生徒が振り返り、彼女を見る。
さすがに彼女も、マクゴナガル先生の気迫に気圧されたのか、襟元のボタンを閉めた。先生たちでさえ、今夜ばかりはローブを新調しているようなのに、彼女はいつもどおり、白のシャツブラウスだった。
複数の生徒が、くすくすと笑っている。首元を苦しそうにいじりながら、「マクゴナガル先生が一番、張り切ってますね」とフィルチにだけ聞こえるように言った。

「ほっほー!」

そのとき、ダンブルドアが声をあげた。

「わしの目に狂いがなければ、ボーバトンの代表団が近づいてくるぞ!」

>>

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -