16 二度目の侵入

リーマスと彼女の関係をなんと呼ぶのか、それをシリウスも知らなかった。彼らの親密さは、恋人同士のような、仲の良い兄妹のようでもあった。
談話室で、なにをするでもなく、ただ手を繋いでいるふたりを、たびたび見かけたこともある。肌に触れ合い、彼らはそれを無条件で許しあっていた。

あれは、たしか薬草学の授業で、温室へ向かう途中だった。ジェームズと校庭を歩いていると、同じように、前方を歩く彼らの後ろ姿が目に入った。
彼女が、とつぜん、自分のローブを脱ぎ、それを隣のリーマスと一緒に頭から被るようにして隠れてしまったので、シリウスは、恋人同士がたわむれているのだと思ったが、そこでジェームズに肩を叩かれた。
校庭の青空に浮かぶ、白い三日月を、ジェームズは笑いながら指を差していた。一瞬の間のあと、なるほど、と思ったものだ。そしてなぜか、ひどくうらやましいと思った。
どんな女の子と付き合っていても、三ヶ月と続かないシリウスにとって、彼らは憧れに近かったかもしれない。
相手の存在の大切さを、彼らはきちんと理解していた。手を繋ぐことで、お互いを支えているようにも見えた。
その関係は、いまも呼びかたはわからない。だが、やはり美しかった。
ふたりの関係がシリウスは、シリウスの憧れのまま、いつまでもつづくことを願っていた。

パッドフッドの前足に頭をすり寄せてくる、オレンジ色の猫に向かって、シリウスは感謝を伝える。
猫がくわえて持ってきた紙切れには、びっしりと単語が書きこまれている。きれいな字ではなかったが、寮の合言葉だとすぐにわかった。シリウスが、グリフィンドール寮に入りたがっていることを、この猫はよく知っているのだ。
だれが飼っているのかもわからない、オレンジの猫は、珍しく甘い香りを纏っていた。生クリームの匂いだ、とシリウスは思い出す。
昔から口にすることのなかった、この匂いにつられ、恐ろしく甘党だった古い友人の記憶が頭をよぎる。
罪悪感が、胸で疼く。
だれよりも支えが必要だった彼は、いまも孤独に生きている気がした。

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