「まーたこんな所でサボってやがったのか」
ライナーが話しかける相手。
そびえ立つ壁の淵に座り、煙草をふかす彼女はライナーと同期で想い人のサラだ。
「煙草、やめろよ。似合ってねぇぞ」
「似合う似合わないで吸ってんじゃないのー。ほら、ライナーも吸ってみ?はい」
煙草を渡してくるサラは、ライナーが吸わないと知っていてやっている。
「いや、遠慮しとくぜ。長生きしてぇからな」
・・・まあ、できねぇけど。
そう思いながら下を向いていると、サラは顔を覗き込んでライナーに煙を吐いた。
「ぶあっ!?おま・・・っ!!何すんだ!」
「・・・いや、どうしたのかなって。急にらしくない顔するから」
煙たさでむせたライナーは、落ち着いてからサラを見る。
また煙草を吸い、煙を吐きながら煙草を壁に擦って火を消す。
「・・・いや、なんでもねぇ。それより戻らねぇと兵長にサボりがバレちまうぞ」
話すライナーを座ったままのサラはゆっくりと見上げた。
「・・・ねぇ、ライナー」
「なんだよ」
「キス、したいの?」
急なサラの発言にライナーは唖然として、サラを見たまま動かなくなった。
「・・・は!?なんだよ急に!!」
「んや、したいのかな・・・って」
サラは立ち上がり、ライナーに向き合う。
「顔真っ赤だよ。ふっ、笑えるね。もしかしてした事ないの?」
ジリジリと迫ってくるサラに、少し後退りするが、地面になった壁の大きな出っ張りにつまずき、尻もちをついた。
尻もちをついたライナーを見下ろしながら、サラはそのままライナーの足の間に膝をついて座った。
「っ・・・サラ・・・からかってんならやめろ!!」
肩を押して拒んだが、サラの顔を見ると自分の腕の力が少し弱まったのが分かった。
「・・・私じゃ、嫌?ライナー・・・。私、ライナーが好きなんだよ」
切なそうな表情で言葉を零すサラ。
ライナーの鼓動は物凄い速さで脈打っていた。
「ほ・・・本気なのか・・・冗談なら今止めてくれたら許し」
「本気だよ。出会った時から好きだった・・・。キスしたいのは私の方。次の壁外調査で死ぬかもしれない、もしそうなった時に悔いを残して死にたくはない。ライナーが嫌なら・・・やめる。煙草臭いだろうし。そもそも女として見られてないかもだけど」
そんな弱気な言葉を遮るようにライナーはサラを抱き締めた。
「ラ、ライナー・・・?」
「俺も好きだ。ずっと好きだった」
好きになってはならないと分かっていたのに。
戦士として生きることを決めたライナーにとっては伝えてはならない気持ちだった。
でも、サラの気持ちを知り、一気に気持ちが抑えきれずに溢れて止まらない。
ライナーはキツくサラを抱き締めると、サラがいつもふかしている煙草の匂いがした。
「意外だね・・・クリスタが好きだとばかり思ってたのに」
抱き締め返しながらクスッと笑うサラの声は柔らかく、普段聞く声より愛しさを纏っていた。
「クリスタは・・・女神というか、その・・・なんだ・・・言葉じゃ言い表せないが・・・」
モゴモゴと説明するライナーにまた笑みを零して、サラはライナーの唇に触れるだけのキスをした。
「あ・・・」
「ふ、何?なんて顔してんの?」
「・・・俺からしたかったんだよ・・・」
そう言ってライナーからもキスをした。
ゆっくり離れると、照れたように2人は笑う。
「本当に・・・サラには振り回されっぱなしだ」
「優等生でも攻略は難しい?」
「ああ、本当に厄介だ」
するとライナーは思い出したように立ち上がる。
「ヤバいぞ、戻らねぇと兵長が・・・」
「そうだね、じゃあもう一本だけ煙草吸わせて」
「ダメに決まってるだろ!!」
結局サラに言いくるめられ、見つめられ、甘えられたライナーはサラが煙草を吸い終わるまで残り、ようやく戻った後はリヴァイにしっかりと絞られたのは言うまでもない。
「・・・本当に、振り回されっぱなしだ・・・」
「ふふ、可哀想。大好きだよ、ライナー」
「あぁ・・・俺もだ・・・」
ーENDー
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