エルヴィンと交際してもうすぐで三年が経つ。
 私たちの日常はというと、団長と酒場の女、ただそれだけ。そう、周りに公表もしていない。
 人類の反撃の糧である調査兵団を率いる団長が女にうつつを抜かしているとすっぱ抜かれた日には、エルヴィンに熱心なお貴族様(・・・・)からの支援も減るかもしれない。
 
 エルヴィンもまた、私の考えより遥かに多くのことを考えているに違いないし、私もそれを充分理解した上で三年もの間、ただの他人のフリを貫いてきた。
 しかしそのせいなのか、エルヴィンはひどく酔った日には私だけに……多分、私だけにある一面を見せる。
 
  ───
 
「エルヴィン、もうやめときなよ。酔ったら面倒なんだから」
「いいだろう、ほら君もまだ全然酔ってない。久し振りの調整日だし、君ももっと喜んでくれればいいのに」
「充分喜んでるから、っこら、すぐお尻触っちゃ……やっ!」
「ははっ、可愛い。……なあ、サラ」
 
 前回の調整日は半年前だったか。
 名前を呼ばれた私は、椅子に座ったエルヴィンを見る。キスをしたいらしいが、魂胆は丸分かりだ。キスしに来たところを捕まえてベッドに連れ込むつもりだ。ほら、酔ってるからポーカーフェイスも崩れてニヤニヤしてる。
「うう、絶対動かないでよ? わかった? まだ飲みたいし、えっちなことはダメだから!」
「ん、分かったから早く。何もしないさ、手を頭の後ろで組もうか? ほら、もう大丈夫だ、さあこい!」
「いやっ! ねえ、あは! 絶対すぐ捕まえてくるでしょ!?」
 酔っ払った二人を止めるものは誰もいないので、いつまでも唇を尖らせたままの調査兵団団長と、その女が部屋の真ん中で大笑いしながら攻防戦を繰り返している。
 
「……なあ、キスしてくれないのか? そんなに俺が信用ならないのか……? それとも、嫌いになったか?」
「ん、っ、それズルい……好きだよ、くそお……、でも捕まえちゃダメだからね、わかった? まだ一緒にお酒飲みたいから……」
 しょぼくれたエルヴィンを宥めるために近付いて、顎を上げてキス……したところで、案の定、がっしりとした腕が私の体をしっかりとホールドし、抱え上げた。
「あーっ! こら!」
「単純な罠に引っ掛かるサラが悪いさ。他の男に騙されていないか心配だな、今から触診するから寝台にいこう」
「ば、ばか! 変態! お酒飲みたい! 降ろせエロおやじ!!」
「往生際が悪いぞ、諦めろ!」
 ベッドに寝かされ、今まで散々待てを食らっていた犬のようなガッツキで私にキスをしながら、私のワンピースの胸元を下に引いた。オフショルダーの白いワンピースはコルセットで固定されており、胸元はゴムになっているので、すぐに露出した。
「ああ、こんないやらしいモノ貼って……誰かが剥がしてきたりしないのか?」
「んやっ、あ……!」

 下着をみせるわけにいかないので、乳首にはニップレスを貼り付けている。エルヴィンはその上から乳首を爪で何度も掻き、刺激された乳首は案の定、ニップレスの下で勃起し始める。
「や、だ……やだ恥ずかしい、なんか……っ」
「そうだろうな。こんなモノを貼っていたら、勃起したら卑猥だから隠してるといってるようなものだろう」
「ちが、下着見えたら……見た目が良くないから……っ」
「あと、俺が好きそうだから貼ってるだろ。当たりだよ、すごく興奮する」
「け、見当違いにも程があるよ!? ちょっと、よ、酔いすぎ……っあぁ!」
 ニップレスの上から乳房を吸われ、乳首のあたりを舌が行き来するが、感覚が鈍くなり、焦れて剥がしてしまいたくなる。だがこの様子では、しばらく弄ばれるだろう。

 エルヴィンの肉体を前にした私はただのメスになる。嫌だなんだと口で言いつつも、しっかり子宮は疼いて、しきりに下腹部が無駄に震える。酔ったらすぐにでもエルヴィンが欲しくなってしまうのが私の悪いところだし、

「ふう……勃起しすぎて痛い」

 そう呟いたエルヴィンは私に跨ったままでワイシャツをはだけさせ、私を見ながらベルトを外し、チャックを下ろした。エルヴィンは私をよく分かってる。
 
「は……ちんぽおっきい……」
「……今日は、どうする?」
 エルヴィンが一度扱き、下へさげて手を離すと、重さであまり反りはしないが、充分な硬度とサイズのペニスが揺れた。
「ぺろぺろ……」
「くふっ、ああ、いいよ」
 私の言葉に小さく笑いながら、膝立ちでいるエルヴィンの股の間から抜け出し、四つん這いになって舌を伸ばす。まだ触れてないのに、息がかかっただけでペニスはぴくりと可愛く反応した。そして、動物のように舌だけでペニスを舐め、睾丸から亀頭にかけてをゆっくり、ねっとりと舐める。そうしたらほら、エルヴィンはすぐ私の頭を撫で始める。これが好き。
 
「んは……、」
 裏筋に吸い付きながら唇を這わせ、そのまま亀頭部分に到着してすぐ、口内へペニスを迎え入れる。エルヴィンはこれが好きで、小さく喘ぐ。それがまた大好きで可愛くて、つい、亀頭に吸い付いてしまう。これは意地悪としてやる。今は私が主導権を握ってるから、エルヴィンは今だけは私に従ってくれる。……とても気持ちよさそう。
「はあっあ、待ってくれ、まだイきたくないっ……!」
「っは、ふう。あはは、情けないね、だんちょおさん」
 
 唾液をたっぷりと亀頭に残し、それを潤滑油にして亀頭を手のひらで優しくクルクルとまわし、時たま全体を扱いて焦らしながら、セクシーな胸板にキスをして小さな乳首に吸い付く。あっという間にエルヴィンは壁に背を預ける形になるんだけど、これはすぐに射精しちゃうからエルヴィンも意地になって、私を抱き締めながらベッドに寝かせた。

「エルヴィン、もう……っ」
「んん……? もう、何だ……?」
 エルヴィンは私の胸でたのしそうにしている。ニップレスを舐めていたエルヴィンが歯を立ててニップレスを剥がした。勃起した乳首を見て笑って、それに吸い付く。ようやく貰えた強い刺激に腰が浮いて、犬の鳴き声みたいな声が出た。
 
 私は乳首を愛撫されながら、自分から下着を脱いで、エルヴィンのペニスに割れ目を擦り付け、準備万端のアピールをする。
「なんだ? 発情期か?」
「んうう、欲しいよお……、エルヴィンだって苦しそうじゃん……」
「ああ、苦しいよ。なんせ自慰する暇なんてないくらい激務だし、最後に射精したのは半年前の君とのセックスだからな。射精の仕方をペニスが忘れていなければいいが」
「じゃあ早く……、挿れ」
 
 エルヴィンは私の話が途中なのに、私が擦りつけていた膣口と亀頭が引っ掛かった瞬間、なにも言わずに挿入してきた。私は突然のことで声も出ず、下腹部から頭を抜けていく快感に痺れて仰け反った。
「……すご、いっ、ぅあ、」
「はあ、半年ぶりだが……誰も使ってないみたいで安心したよ」
「当たり前、じゃん、か……エルヴィンのちんぽ、今までで一番でかくて、気持ちい……からねっ……」
「はは、嬉しいな。衰えないように鍛えないと……」
「ん……? ちんぽ、鍛えられ……ん、あ……あぁ、あうっ!!」
 
 エルヴィンのペニスは、半年間使われることがなかった私の膣を遠慮も容赦もなく押し進み、再び自分のサイズへと拡げていった。
「子宮口に当たった……やはりまた狭くなってるな。腹は痛くないか?」
「ちょっとおへその辺りが違和感あるけど大丈夫。……ね、今日、いっぱいシよ……?」
「ああ、もちろん。今日は寝かさないよ」
「あはは! 何それぇ、クッサぁい」
「……言ってみたかったんだよ」
 私たちは笑い合い、キスをしながら、初めはゆっくりと、さっき違和感があると言ったことを気遣ってか、ゆっくりと腰を揺らしてくれた。
 
「あああ……しゅご、あたま、と、からだ、溶けちゃう、」
「溶かしてるんだよ、」
「んふふ、やだあ……」
「腹は? まだもう少しゆっくりした方がいいか?」
「ん……気持ちいい、もうちょっと早くて大丈夫」
「痛くなったらすぐに言うんだ、分かったか?」
 私は頷いて、エルヴィンの首にしがみついた。エルヴィンも私の体の下に腕を入れ、抱き寄せてくれた。そのまま先程より、少しだけ速くしながら、律動を再開した。厭らしい音が下から聞こえて、二人の呼吸音とその音、あとは肌がぶつかり合う音だけが部屋に響く。快感に痺れて、上手く声が出せない。声を上げれば快感を逃がすことも出来るが、気持ち良すぎて短く、小さく鳴くことしか出来ない。
 
「サラ、大丈夫か」
「ん”、う”」
「大丈夫そうだな」

 だめだめ、イく、気持ち良すぎる、半年ぶりのエルヴィン、だめ、っ
 
 私は頭で叫びながら、エルヴィンの胸の中で呆気なく達した。それを察したエルヴィンは離れ、私を撫で回す。
「はは、クタクタになったサラが大好きなんだよ……可愛い……」
 そう言って、まだ残っていたニップレスを酷く剥がした。
「いっ……た、最低ぇ……」
「これで帰りは乳首おっ立てて帰るしかなくなったな」
「も……、さいてえ……こいつぅ……」
 
 余韻に浸りながらも、エルヴィンが既に律動を開始しているのを感じて黙る。エルヴィンが私の顎を引き上げ、キスをしたその時だった。
 
 口の中に金属が触れた。エルヴィンが離れたので、何事かと思いながらソレを指で摘む。唾液が糸を引きながらも見えたのは。

「……ゆび、わ……?」
 
 ダイヤが輝く指輪が、口内から摘出された。
 
「……は? え? 何事……?」
 なにも理解ができていない私を他所に、体内にペニスを残したまま、エルヴィンが私から指輪を取り、私の左手薬指に填めた。
 
「受け取ってくれないか?」
 
 唾液でなのか、指輪そのものなのかは不明だがキラキラしている指輪。私は率直な感想を述べた。
 
「……汚い……、え、なんで今、なんでキスで渡したの……?」
 エルヴィンはあっけらかんとした顔で、「面白いだろ?」と言った。
「ああ……うん、やっぱり可愛いよ。似合うと思ったんだ。なあ、俺たち、一緒にならないか」
「……へ、今までの……三年間の苦労は……」
「なかなかスリルがあっただろ? だがな、俺はお前が待ってる家に帰りたくなったんだよ……。なあ、いいだろ?」
「いいだろって、あのねえ……んっ、ちょっ、と、今、だめえっ!! ああっ!!」
 
 それからは達しかけると焦らしてプロポーズされ、絶頂の瞬間に結婚の返事を返して、達しすぎ、酔いすぎの私たちはそのまま、抱き締めあって泥のように眠った。
 

 ───


「エルヴィン団長との馴れ初めを!」
「エルヴィン団長からはなんとプロポーズを?」
「プロポーズの言葉は? 状況は?」
 
 そんな質問を受ける結婚式。私はプロポーズについては何も言えなかったが、エルヴィンときたら。
 
「私は彼女を星が見える場所へ連れ出しまして」
 
 そう語り始め、美しい夢のような話に男女構わず、記者や周りはうっとりとしていた。
「彼女は本当に素晴らしい女性です。こんな私を受け入れ、愛してくれる。私も彼女を、たとえこの命絶えたとしても愛し続けます。……サラ、愛してる」
「……うん、私も。愛してるよ、エルヴィン」
 
 ちなみに、エルヴィンが語った夢のような話が当初のプロポーズのプランだったそう。真逆のような展開だったけど……今、幸せだし、プロポーズのことはもういいか。
 
 
 -Fin-



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