流れ落ちたのは赤い
あの人をヒトだとわからせてくれる


「…何してやがんだ」

「…サー」

「血まみれじゃねぇか」


名前が部屋の真ん中で寝転がりながらナイフを手首に当てていると、部屋の主が戻ってきた。
それなりに溢れている血の量を見ても動じないのは慣れているからか。


「…ええ、血ね」

「手首切ったくらいじゃ」

「死なないのはわかっています。だからやっているのです」

「…部屋汚すんじゃねぇよ」


カツカツと靴を鳴らして歩いてきたかと思うと、隣に座り込む。
クロコダイルさん…?名前を呼べば腕を掴まれ、傷口を舐められた。ぞくり、と痛みとは別の何かが体に伝わる。


「…あ」

「…相当深く切りやがったな」

「ん…」


手首に噛み付き、傷口を広げれば溢れ出す血液。ポタリ、ポタリとクロコダイルの衣服を濡らす。
口周りが血まみれになるのも構わず血液を舐めとれば虚ろになる名前の瞳。


「…クロコダイルさ…」


血の味と掠れた名前の声はクロコダイルの脳内を麻痺させる。


「…もっと、私を…」


貴方の一部にして下さい。


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