「ゼット先生…少し無理をしすぎだと思います」 「なんだ、心配してくれているのか…これくらい何てことはない。それよりなまえ、スマッシャーの調子はどうだ」 「…問題ないですよ。流石、海楼石ですね。私が心配なのは先生ですけど」 「そんなにヤワな鍛え方していない。…は、」 苦しそうに眉を寄せながら吸入器を取り出すと薬を吸入する。それを心配そうに見守るなまえは新しい吸入器を手渡した。 「そちらの薬もそろそろ切れますので…」 「ああ…すまない。最近回数も多くなってきたな…」 「そうですね。…無理しすぎるとアインもつられて無理するんですから…」 「…すまない」 「アインが心配なら、無理を控えることですね」 なまえが空の吸入器を片付けると苦笑しながらその場を離れる。…と、ベッドに座っているゼットの左手がなまえの手を引いた。 「…ゼット先生?」 「…なまえ。先程からアイン、アインと…お前の気持ちはどうなんだ」 「……」 「昔からの癖、だな。自分のことを隠すときに黙る、…悪い癖だろう」 「…すみません」 わざとらしく溜息をつけばなまえはびくりと肩を震わせて俯く。可愛いと内心思いながらも決して表情には出さないようにした。 「…なまえ」 「…はい」 「…お前も優秀な、優秀すぎるくらいの真面目な生徒の一人だ。しかし、自分のことを隠しすぎている。感情を押し殺していたら誰ともわかり合えないぞ」 「…それは、アインも同じだと思います」 「ああ、知っている。…二人して困った生徒だ」 全く…とサングラスを外しながら改めて見つめるとなまえは目を逸らすが、ゼットの淡い色合いの瞳は真っ直ぐと、なまえの瞳を見つめる。 「…なまえ」 「…はい、先生」 「前にも言ったよな…?自分を偽るな、と。偽っても何も伝わらない。…それで失ったものは?」 「…家族」 「また失いたいのか?」 鋭い一言を告げられて顔を上げたなまえはゼットを睨むように瞳を細くした。瞳に宿った炎を見逃さなかったゼットはくつくつと喉で笑うとサングラスをかけ直す。 「悪かった。ただ、またこんなことがあったらおれは何度でも傷を抉るぞ」 「…はい、すみませんでした、ゼット先生」 「今後気を付けるように」 「…はい」 なまえは苦笑しながら頷くとゼットに一歩近寄り、首を傾げるゼットを眺めながら額に軽く口付けた。驚いて目を見開くのをくすくす笑いながら見つめると。 「私の本心はこれですよ。気付いていたでしょう?」 |