「どぉああああああああああ!!?」


のんびりした昼下がり、素っ頓狂な叫び声が船内に響き渡った。


「名前っ!何でクローゼットの中に居るんだオメェはっ!」

「潜入してました!段ボールでも良かったんだけど、船になくて…」

「ドラム缶でも被ってろ」

「やだなあ、キャプテン。私が非力なの知ってるでしょ?」

「だから言ってんだ。動けなくなるだろ」

「なるほど。………えっ」

「えっ」

「……」

「……で、何で潜入なんか」

「あのねあのね!キャプテンが私のことずっと想ってくれてるのか心配になって!」

「………ハァ?!」

「離れてる時とか、ちょっと不安になったりとか、して…えへへ」


なあんだ可愛いじゃねぇか、とバギーは鼻の下を伸ばす。クローゼットから名前を引っ張りだし、強く抱き締めた。


「キャプテン?」

「もしかしてあれか、たまに棚のおやつ無くなってたのって名前の仕業か」

「潜入してたらお腹すいたの…」

「服とか畳まれてたり」

「畳み方きたなかった!」

「掃除されてたり」

「日頃の癖でつい…」

「本棚の並び順変えてたり」

「それ違う」

「えっ」

「えっ」

「………なにそれこわい」

「やだやめてよキャプテン…」


二人は苦笑いしながら冷や汗を流す。


「まあとにかく!名前のおれ様への愛はとてつもなくでかいって訳だ!」

「はい!愛してます!…それで、キャプテンは?」

「あァ?決まってんだろ!愛し」

「本当に?!こんな侵入しちゃう子でも?」

「名前なら許」

「実はキャプテンの秘密の日記帳とか見つけて読もうかどうしようか本気で悩んだ末に理性が勝って元に戻したけどやっぱり気になって持ち歩いてても?!」

「!?…ま、まあ愛が」

「それからそれからキャプテンのベッドに潜り込んではすはすしちゃってるけど許すの?!」

「おま…」

「きゃああキャプテン愛してます!」

「ぐえっ」


名前はバギーに飛び付き、胸板を堪能するようにすりすりと頬を擦り付けた。ふっとバギーの怒りは消える。


「オメェ、とんでもねェ子だったんだな」

「えへへ。それでそれでそれで!キャプテンはこんな私でも愛してくれると誓いますか?!」

「さっきからっ、」

「わっ!」


バギーは名前の両脇を抱え、自分自身の目線まで上げ、


「愛してるって言ってんだろーがっ!」


大声で叫んだ。







バタン!
(バギー!うるさいよ、部屋の外まで聞こえてる!)
(うおおレディ!?)
(あ、アルビダ姐さん)
(…なんだい、名前。高い高いされて)
(え?高…?)
(全く。そんなだからいつまで経ってもガキみたいな恋愛しか出来ないんだよ)
(ガ…っ)
(ガキ?キャプテンもうオッサンですよ?)
(……名前、大人の恋愛を教えてやるよ)
(本当に?わあい、今行っ)
(ダメだ行くな名前!お前はもっとおれ様色に染まるんだ!)
(えっ?)
((呆れるねえこの二人は…))







110615



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