「やーいやーい」

頭からバケツを被り、びしょ濡れになった彼女に向かってシャンクスは子どものように笑った。


「まぁた引っ掛かってやんの!名前は鈍いなあ。だっはっは!」

「っ…この、オヤジがぁああ!!今日こそは覚悟しろぉおおおお!!」


ドタバタと逃げるシャンクスを追い掛ける名前。コンパスの差で全く追い付けず、息を切らすのは彼女だというのに毎回飽きもせず追いかけまわす。…と、いつもならそうだったが。


「ぜえ、ぜえ…っ!また逃げられた…!でも…狙い通り。ふふ!今日は負けてもらうわよ、オッサン」


彼女はガッツポーズをしながら小電伝虫を取り出した。













「…ん?あれ?名前が追いかけてこねェ。さては途中で諦めたな」

「お頭」

「お?なんだ、ヤソップ」

「悪ぃ、この本ルゥに渡しておいてくれねェか?」

「いいけど…自分で」

「じゃ、よろしく!」

「……行くの早」


シャンクスは足早にルゥのいるキッチンへ。


「おーい、ルゥ。これヤソップから」

「サンキュー、お頭。ついでにこの本ベンに持っていってくれ」

「えー。めんどく」

「頼んだ!」

「は?ルゥ!…んだよ。見た目によらず早いな…」


そしてベンの部屋へ。


「ベンちゃーん。これルゥからー」

「…ああ、此処に置いてくれ。呑んでくか?」

「はいよー。………。ほう」

「……!」


何かに気付いたらしいシャンクスは本を机に置き、近くにあった椅子を叩く。…と。音を立てて崩れる椅子。


「ベン…じゃねェな。名前!」

「…座ると思ったのに」


ベックマンの陰に隠れていた名前はむすっとしながら明るい場所へ出てきた。


「なるほどなー。お前にしちゃよく出来たイタズラだ。だが、まだまだ甘い。だっはっは!」

「ふーんだ。次こそ勝ってやるもん」

「次?次なんて無いぞ?」

「あるしっ」

「無いね」

「ある!」

「無いって」


シャンクスは名前に近付き、頭をぽんと撫でる。


「この勝負はおれの勝ちだ」

「!?」

「ん?違うな。この勝負も、おれの勝ち!名前に勝ち目無ェよ」

「うわ、むかつく!ちょっとベン、何か言ってやってよ!」

「…お頭、たまには勝たせてやれよ」

「えー」

「ベンまで!いいもんいいもん絶対勝ってみせるもん!」

「おー、がんばれー」




翌日。



「………」

「だっはっはっ!!」


前日と同じ手にまたもひっかかる名前の姿があった。



(((((名前じゃァ、お頭を超えられねェな…)))))




(待てコラオッサンんんんん!!)
(待つ奴がいるかよ!捕まえてみろー?)
(あぁあああ!!!)
(だっはっはっは!!!)






110719



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