戦場に行くのは何度目か数えられる程度だった。そんな私を庇ってキャプテンは火が海面に広がる、文字通りの火の海へ落ちていった。 「キャプテーン!今私が!」 海に飛び込むとゆっくり沈んでいくキャプテン。急いで近くまで泳いで、浮上する。 「ぶはっ!」 「きゃぷてん!良かった、掴まって下さい。今船に戻ります」 弱々しく回された腕に不安を抱きながら、みんなの待つ船へ。 「バカヤロウ!オメェ、飛び込んでくるバカがいるか!」 「だってだって!キャプテン沈んで…っ」 「ケガしたらどうすんだ!」 「キャプテンだって死んだらどうするんですか!?」 「おれの身より自分の身心配しろ!」 「私の身より自分の身心配して下さい!」 「…二人して沈んだら良かったじゃないか」 「「レディ?!」」 レディが衝撃的なことを言い放つもんだからキャプテンと手を繋いで震えた。 「ま、まァ二人とも無事で何より!」 モージが慌てて間に入る。 「そうさね、無事だったことに感謝してればいいのに…何で言い合いになるのか」 「「ごめんなさい」」 「わかれば宜しい」 フン、と鼻を鳴らしてレディは船内に戻っていった。そうだよね、助かったのに何で言い合いなんてしてるのか。 「…ごめんなさい、キャプテン。心配してくれてありがとう」 「ん!?いや、おれこそ悪かったな…!アー…助けてにきてくれて、…ありがとな」 「だって大好きなキャプテンの為ですから!」 「…野郎共、おれ様と名前の無事をハデに祝えー!」 キャプテンの一声で船上は一気に祝杯ムード。あれよあれよと言う間に御馳走が並び、御馳走の量とは比べものにならないくらいのお酒が並んだ。 「…さっきの敵船から奪ったんですね、わかります」 独り言を呟いていたらキャプテンが隣にどっかり座り込む。ほら、とグラスを渡されて受け取った。 「…ん、…ん?これジュース」 「名前は飲めないだろ?」 「…こういうときくらい、少し飲みたいなあって思ったんですけど」 「そりゃ悪かったな!だけどなァ、名前。残念ながらお前の飲めそうな弱い酒は無い!」 「…え、もしかしてわざわざ持ってきてくれたんですか?」 「いや、カバヂが」 「参謀長だいすき!」 「カバヂィ!ハデに死ね!!」 「キャプテン、それ理不尽」 どっと沸き上がる笑い声。カバヂは冷や冷やしながら成り行きを見守った。 宴が始まって早数時間。日はとっくに沈み、酔いつぶれる者が多数出てきた頃、酔っていない名前は一人で船内に戻る。 「名前、待て、」 「…何ですか?お水とかタオルとか色々持っていってあげないと」 「……ああ、そうか、優しいな…!」 「…部屋に戻ると思ったんですか、キャプテン?」 「!!」 「あはは、図星」 「…仕方ねぇだろ?寂しそうにしてたからよ」 「……まあ、本音はね。みんなお酒飲んでるのに私だけ仲間外れ」 「それも、」 「仕方ないってわかってるけど、…あはは、早くお水持ってってあげなきゃ」 「…名前、」 名前がなに、と答えようとした瞬間、バギーに抱き締められていた。 「…え、キャプテン?」 「ハデに可愛いなちくしょおお!」 「きゃぷ、」 名前の声はバギーに口付けによって遮られた。 (…恥ずかしい) (茹で蛸になってるぜ、名前) (う、うるさいっ) (大好きだ) (…………私も) 110828 |