「うわあ、目に悪い人」


実に率直な感想を述べると周囲の人達が慌ただしくなった。
…何で?


「名前ちゃん!何てこと言ってるの!この方はうちの常連さんで…!」

「フッフッフッ!お嬢ちゃん、面白ェなあ!」

「もっ申し訳御座いませんドフラミンゴ様!この子はつい先日入ったばかりでして、悪気があったわけでは…!」


店長が平謝りしています。
もしかして…また私やらかした?…!


「あっ、ごめんなさい!」

「フフッ!別に気にしてねぇよ。それよりお嬢ちゃん、何か一杯作れ」

「はい、心を込めて作らせて頂きます!」


ドフラミンゴはカウンター席に移動し、彼女を舐めるように眺める。


「ドフラミンゴ様、あの、本日の御代は結構ですので、彼女をどうか使ってやって下さい」

「あぁそのつもりだ。お嬢ちゃん、バーテンダー見習いか?」

「はい。なんかカッコイイと思いまして」


にこやかに語る彼女にはまだ幼さが残っており、酒を扱わせても大丈夫なのかという多少の心配と、どんな酒が出てくるのかという好奇心が入り混じる。


「カッコイイからバーテンダーか。大丈夫なのかあ?フフッ!」

「大丈夫ですよ!私、こう見えてもお酒強いんですから」


フッフッフッ!そういう問題じゃねぇんだけどな、


「お待たせしました。名前スペシャルカクテルです」

「ほお、見た目はいいな。…ピンクと紫っつーことはおれをイメージしたのか?」

「はい、第一印象です!」

「フッフッフッ!正直だな。…味もいい」

「ありがとうございます。ドフラミンゴ様」


濃いグラサンの奥にある目と合った気がした。


「…っ!あれっ?」

「フッフッフッ…!どうした?」

「や、その…え?(動けない!)」

「おいマスター!」

「はっはい!いかがされましたか?また新人が粗相を?!」

「今日限りでコイツは辞める」

「え?!ちょ、ドフラミンゴ様?何を…」

「申し訳御座いません!やはり粗相を」

「おれが貰っていく」


名前の意志に反して体はドフラミンゴの元へ動く。
驚いたまま硬直しているマスターに札束を握らせ、ドフラミンゴは名前を持ち上げ店を出る。


「えっ、ええ?」

「フッフッフッ!これからはおれだけのカクテルを作れ」

「折角バーテンダーになれたのに…!」

「おれだけのバーテンダーになれ。拒否権はねぇよ」

「…!!」




悪いひと




(目だけじゃなくて人にも優しくなかった!)
(手休めるな。もう飲み終わるぜ?名前チャン)
(もっとペース落として下さいよ)
(フッフッフッ!こんな美味いんだ。ペース落とせってのが無理だ)

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