アーロンさんは優しいから、自慢の歯と鋸で私を傷付けないようにとキスをしない。でも、やっぱり、



ちゅーがしたいの!



「呼んだか?チュッ」

「チュウじゃない。私はアーロンさんとちゅーしたいの」

「ああ…」

「…見るからに呆れないでよ」

「だってお前…アーロンさんが優しいの知ってんだろ?」

「知ってるよ」

「じゃ、」

「乙女心を踏みにじんな」

「……」

「いいから黙って聞いて。とにかく、私はアーロンさんとちゅーしたいの」

「……。だ、そうだ。アーロンさん」

「は?」

「ほう…!最近落ち込んでいると思ったらそんな理由だったのか」

「…あ、アーロンさんごきげんよう…!」


やっばい聞かれてた!チュウ気付いてたんなら教えてよ!


「で?おれとキスがしたいって?」

「……はい」

「シャハハ、素直だな。おれの部屋に来い」


チュウのばーかっ!て思ってごめん。何かいい方向性になってきた!アーロンさんが部屋に向かい始める。こっそり振り返ってありがとってチュウに伝えた。


「…チュッ、」









アーロンさんの部屋に着いて、ガバッと腰に抱き付く。


「…甘えるのはいいんだがな、名前?」

「…はい」

「チュウに迷惑かけんな」

「ごめんなさい」


ちょっとだけ反省したら、アーロンさんが跪いた。跪いても同じ目線で、何だか恥ずかしい。


「…名前」

「…アーロンさん…」

「首傾げて目ェ瞑れ。それから動くな」

「…はい」


言われた通りにすれば暫く沈黙。


「…アーロ、ン、」


むに、と柔らかい感触が唇に。……わあ、キス、してる。首がちょっと痛いけど。


「ん…っ」

「…人間のような口付けは期待するな。これが限界だ」

「…ん、ふふ。これが一番いいです。ありがとうございます」


目を開けるとそうか、と笑って頭を撫でてくれた。





(あわわ、念願のちゅーしちゃった…!)
((…キスしてから名前が笑顔なんだが。そんなに嬉しいものなのかこれは…))

- ナノ -