甲板の真ん中で盛大に祝われているのはアーロン一味の船長、アーロン。その様子を羨ましそうに、船内に続くドアからこっそり眺めるのは一味の中で唯一の人間、名前。一味の中に混ざって祝いたい気持ちはあれど、魚人の中に入っていっていいのかと悩む。


「ニュ?名前、何やってるんだ」


ドアの前にいる名前を見つけたハチは四本の腕で巨大なケーキを持ちながら首を傾げた。


「…アーロンさん楽しそうだなって…やっぱり同胞のみでのお祝いのが楽しいんですかね」

「ニュー…名前も一緒のがアーロンさんも喜ぶと思うんだけどな」

「…そうかな…」


寂しそうに笑う名前の頭を使っていない手で腕を掴むと甲板に向かった。名前は抵抗するも間と魚人の差は歴然で、いとも簡単に引きずられる。


「ハチー!離してー!」

「アーロンさん!名前が妬いてたぞー」

「名前…!お前何処にいたんだ」


アーロンは立ち上がるとハチに近付いて捕まっている名前を抱き上げた。落ちないようにとしがみつく名前を加減しながら抱き締めると元の位置へ、魚人の輪の中心へと戻る。


「今日は宴だって言っていただろ。何で来なかった?」

「……ごめんなさい」

「名前はただ遠慮してただけだよな!アーロンさんが楽しそうにみんなと一緒にいたから」

「ハチ!」

「そうなのか?」


中心に戻ると座り、太股の上に向かい合わせに名前を座らせると逃げられないように腰へと腕を回した。首を傾げて問いかけるアーロンに申し訳なさそうに笑うと、小さく頷く。


「…ほら、私だけ人間だし、お祝いくらいはみんなでしたほうがいいのかなって」

「…人間は嫌いだが、お前は別だ。これに賛同しねえ奴は船から降りたからな。名前も一緒じゃねえと嫌なんだよ」

「……楽しそうにしてたのに?」

「みんな祝ってくれてるんだ。悲しい顔なんて見せられねえだろ」


ぐしゃ、と髪を乱すように撫でると苦笑した。小さい声で謝罪の言葉が聞こえるとシャハハ、と笑って抱き締める。


「もういい。さあ、祝ってくれ。おれの誕誕生日だ」

「…はい!」


嬉しそうに笑う名前を見て、アーロンも嬉しそうに笑った。ハチがケーキをアーロンの目の前に置くと火をつける。お酒が程良く回っている全員で歌を歌うと、アーロンは嬉しそうな、そうでもないような表情をして笑った。


ハッピーバースデー!



(ローソクに火?…この歳でこれは…)
(さあアーロンさん!吹き消してください!みんなもカメラ構えて待ってます!)
(…お前等……)
(とんでもないお宝写真になること間違いなしですね!厳選して飾りましょう!)
(それだけはやめてくれ)





130503にアップ出来なかったのを後悔しつつ。
アーロンさん、誕生日おめでとうございました!

130527
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