静かな廊下にカツカツと音が響いた。次いでそれを褒める声も響く。


「そうそう、いいねぇ〜…!」

「…大将…」


カツカツと音を鳴らしているのは名前。大将黄猿にヒールで歩いてくれと頼まれて彼の前を何往復もさせられている。


「んん〜?」

「この音が好きなのはわかります。私も靴音好きですし…」

「なら歩いて歩いてぇ。君が鳴らす音がどうも好みでねェ〜」

「他の方と変わりない気がしますが?」

「他の子じゃァ…違うんだよねぇ…」


うーん、と腕を組んで何が違うのかわっしにもわからないのだけども、と付け加えた。彼女は黄猿に歩み寄る。


「…ちょっと疲れました」

「ごめんねぇー。じゃぁ、わっしの此処に座ると良いよォ」


床に座り込んでいる黄猿は自分の膝をポンポンと叩く。


「…いえ、いくらなんでも…っあ?!」


それは出来ませんと答える前に黄猿は光となり名前の背中に移動した。反応した時にはもう遅く、抱き締められ拘束された。


「っ…大将」

「遠慮しないの〜」


そのままストンと一緒に座らせられ、足を持たれて伸ばされた。


「ほら足伸ばしてェ…」

「…わ、うわ!」

「オォ〜…細いねぇ…」

「っ…な、撫でないで下さい…!」

「それにスベスベ…触り心地が良いねぇ…」

「人の話を聞いてますか?…大将、他の子にもこんなことをしてませんか…?」

「まさかぁ。名前ちゃんだけに決まってるよォ〜。マッサージしてあげるねェ…」

「…セクハラの対象が私だけで良かったです…。…あの、この、揉み方…っあ…」


むにむにとふくらはぎを揉む手付きは労うというより愛撫に近かった。それを意識した途端、声が漏れる。


「揉み方がどうかしたぁ…?」

「っ!いえ、何でもないです!あ、歩きましょうか!」

「ん〜…もうちょっと触らせて…」

「…ッ…!」


黄猿はふくらはぎから太ももへ手を移した。


「黄猿、さんっ…やあ…っ」

「マッサージしてるだけだけどねェ。ナニを想像してるの…?」

「ッ…!っも、もう大丈夫ですマッサージいいです!」

「んんー…」

「黄猿さん…!」


太ももを揉んでいた手は上に上がり、名前の秘部へと到達する。下着の上からそこを撫でればびくん、と反応した。


「あっ…!」

「名前…」

「ボルサリーノ!!」

「ん…っ!」

「…サカズキ〜…」


撫でる手を引っ込めた黄猿。名前は慌てて足を閉じ、息を整えた。赤犬はズカズカと二人に近寄り、用件を伝える。


「こんなとこで何しちょるんじゃ!会議の時間に間に合わん…ん、名字もおったのか」

「っ、は、い…申し訳ございません…今、退き…!」

「…早ようせェ、ボルサリーノ!こんな所でセクハラするな」


赤犬は真っ赤な名前を見て状況を察し、すぐさま元来た道を戻って行った。溜め息をつく黄猿と更に赤くなった名前は暫く黙ったまま。


「ん〜…!仕方ないねぇ…会議に参加してこようかなぁ…」


よっこらせ、と立ち上がった黄猿は名前を支えて口付けを落とす。


「…黄猿さん…」

「ん〜?」

「…こ、今夜待ってますから!」


俯いたまま一瞬抱き付き、カッカッカッとヒールを鳴らして名前は去って行った。ぽかんとする黄猿は状況を理解するのに数分かかり、理解した時に嬉しそうに笑った。



君の音



(遅い!)
(オー、悪いねぇ)
(悪いって思ってねェだろ、ボルサリーノ)
(ああわかるー?)
(バレバレ)
(二人とも会議に集中せんか!…赤犬だけだ、真面目なのは)
(センゴクさん、サカズキ意外とむっつりよ)
(じゃかァしい!)
((はあ…会議にならん…!))
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