いつか見掛けた貴方に近付くにはどうしたらいいのか考えました。 海軍に入るにも私は海賊の娘。近付いただけで貴方以外の誰かに捕らわれます。 海賊らしく振る舞っても、私には大将を呼び出す実力はありません。 いつか、貴方を呼び出すことの出来る海賊になってみせますわ。 名字・名前 最初の手紙はこれだった。こんな手紙が届くようになって一年、ようやく誰が送ってきたのかわかるようになった。 最近は本部でもよく名字・名前の名前を聞くようになってきて、この手紙が本物であることがよくわかる。 そしてついに。…ついに? 「先方はお前をお望みみたいだな。ちょうどいい。散歩ついでに捕まえて来い」なんて、センゴク元帥様直々の命がおれに下った。…ああ、めんどくさいなー。 彼女、名字・名前は最近「慈悲の海賊団」として名を上げ、本部にもマークされている危険分子だ。 名字はその慈悲深さで海賊でも落ちこぼれだった輩を仲間に引き入れ、引き込まれた輩は恩赦を示すために自ら能力を上げている…とか。 慈悲深いゆえに襲われることはあっても襲うことは無い…とか。海賊らしくないじゃないの。 何でマークされているのか理由を詳しく訊いてみれば、「船長の潜在能力は未知数、船員はみるみる能力を上げているため大佐なら軽々あしらわれてしまう」から、とか。 ……全く、何をしてるんだ海軍は…あ、おれ達か。仕方ない、散歩に行くか。 ……………………… 「あららら…」 「大将青キジ。お目にかかれて光栄ですわ」 海上で出会った海賊は手紙の送り主だった。 「…まさか、とは思うけど、此処で出会うのって」 「勿論、計算済です。良ければこちらでお茶でもどうかしら」 「海軍が海賊にお茶をご馳走になるなんて…まあいいや。お邪魔するよ」 「ええ。どうぞお手を」 船上は 静かだった。 名字によれば船員は船内で待機させているらしい。…油断禁物、かな。 「そんなに緊張なさらなくても。貴方の能力ならこの船を凍らせて無力化することくらい簡単でしょう」 「…まあ、そうなんだけど。手紙のことで訊きたいことが」 「…まあ、読んで下さって嬉しいわ。夢みたい」 「白々しいな。…それで?どういう意図であの手紙を?」 「手紙に記した通りです。いつか見掛けた貴方にまた会いたくて此処まで来たのです」 「…それって」 「私は貴方に一目惚れしたのです。好きってことです」 「………そんな、ハッキリ言われると照れちゃうなあ」 「これを伝えたいがために来ました。私はこれで満足です」 「…おれは君を捕まえてなくちゃいけないんだけど」 「ええ。…捕まえられるならどうぞ」 「……?」 「全ては夢、私の能力ですわ」 「え?」 「相手の手に触れてから夢みたい、と言えば相手は眠り、その夢の中で私は自由に動けるの。…では、またお会いしましょう。目覚めなさい」 ハッと目を開ければ周りは静かな船上のままだった。…やられた。手に触れた時に凍らせてしまえば捕まえられただろう。 船に気配は無いし、これは完全に逃げられた…困った。始末書もんだよこれは…。 「ん?」 手に違和感を感じて見れば、手紙が握られてた。広げて読む。 大好きなクザン。 少しお話出来て嬉しかったわ。次は無いと思うけれど、また会いましょう。 名字・名前 ああ…参ったな。 こんなにハッキリ好きだと言われると、 気になるじゃないか。 (くすくす、あの方は追ってくるかしら) |