ソファーに寝転がってくつろいでいたら名前ちゃんがやってきた。


「大将、ちょっと検証したいことがあるので腕を貸して下さい」

「んー…名前ちゃんのお願いなら仕方ないなあ…」


ほら、と腕を広げ待っていると物凄いしかめっ面で睨まれた。…冗談だから。冗談。本当にもう冗談が通じないんだから…


「…はいはい。腕どうぞ」

「失礼します。ちょっと凍ってみて下さい」

「お安いご用で」


腕を凍らせるとぎゅっと手を握られた。


「…名前ちゃんから握ってくれるなんてオジサン感動。何してるの」

「…私の体温で溶けるかどうか検証してみたくて」

「それは無理だと思…ん?名前ちゃん、ちょっと体温高くない?」

「ええ、だから溶けるかどうか」

「…おでこ貸しなさい」


…おでこに触れれば案の定、熱が出てる。この子は風邪という言葉を知らないのか…。起き上がって名前ちゃんを抱き締めてみる。


「…大将…?」

「あらら…抵抗もしないなんて相当じゃないの。ちょっと寝なさい」

「…お断りします。仕事が残ってますので」

「大将命令。…仕事はおれがやっておくから」

「…でも」

「ほら、」

「っちょ…」


抱き上げてソファーに寝かせれば大人しくなった。顔を覗いてみればほんのり赤いほっぺ、潤んだ瞳、少し荒い息遣い。


「(やば…えろ……)…本当にもー、無理しちゃって…どうしたの」

「……何でもないです…」

「ぷい、なんて効果音がつきそうなくらい可愛くそっぽ向かないの」

「…大将」

「うん」

「…寝るまでそこにいて下さい」

「もちろん。ついでに手繋いでおこうか」

「…はい」


床にクッションを置いて座ると名前ちゃんと同じ目線になった。ソファーに寄りかかって手を握れば握り返される。


「…大将」

「いるから大丈夫。寝なさい」

「…じゃあ、おやすみなさい…」

「うん、おやすみ」




…暫くして寝息がふたつ。
大将を探して部屋に入った海兵は苦笑いしながら部屋を後にした。





(…ん、…ん…?)
(ぐがー)
(………大将っ?!)
(んがっ…あー、おはよう)
(おはよう?!仕事は…ああこんな時間!)
(ちょっとちょっと名前ちゃん…)
(なんですか!)
(キミ、風邪じゃ…?)
(風邪?ただ体温が上がっただけですよ。それに寝たので回復しました)
(ええー…)
(……熱引いたのは、大将に冷やしてもらったお陰ですけどね)
(!!)




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