『今日は二人分の有給取ったし、行こうか』


…なんて、私を連れ出して現在海のド真ん中。のろのろと自転車を漕ぐこの人はこれでも大将と呼ばれる方。


「あー…いい天気だねー」

「そうですねー…」

「海は何処まで続くんだろうねー」

「何処までも続くんですよー」

「夢があるねー」

「ねー」

「それじゃあそろそろお昼ご飯にしようか」


そう言って辺り一面を氷漬けにした。


「流石、大将。でも直に座ったらつらいです」

「そんなこともあろうかと」


ゴソゴソとリュック(※背負わずに前で抱えてます)からクッションを取り出す。


「ああ、だからそんなダサい格好を…。クッションありがとうございます」

「…こうでもしないと持って来れないじゃないの」

「感謝感激です」

「…何だろう、凄くバカにされてるような」

「まさか。大将をバカにするなんてありえません。たぶん」

「…たぶん?」

「お腹空きました」

「何だかなあ。…はい、お弁当」


またもリュック(※背負わずに前で抱えてます)から弁当箱を取り出す。


「…これって軍支給のやつじゃないですか」

「うん。だっておれ作れないし」

「昨日言ってくれれば作ったのに」

「え、マジで?」

「ううん、嘘」

「……」

「さあ大将、お昼ご飯にしましょう」


クッションを氷の上に置いて座ると大将も隣に座った。
程良い日差しと潮風を浴びながら(足元はとても冷たいけれど)黙々とご飯を食べる。


「…このお弁当、心なしかいつも以上に冷たい気がします」

「…能力使いながらだったからね…」

「…大将が冷やしたご飯、美味しいです」

「……!!」


お腹も膨れ(冷え)た頃、もうちょっと散歩しようか、と大将が立ち上がる。
冷えたクッションと空のお弁当をリュック(※背負わずに前で抱えてます) に入れて自転車に乗る。
大将の自転車は一人乗りだけど、今乗っているのは二人乗り用。どうやら特注らしいこと以外謎な自転車だ。
そんな謎な自転車で氷道を何処までも。


「名前」

「はい」



海は何処までも続くから、何処までも一緒に居て。




(…ずっとクーラーと一緒かあ…)
(クーラー…?!)
(夏場はいいですよ。冬場は赤犬さんと一緒に)
(だめ、おれ溶けちゃうし嫉妬するよ)
(…あらら)
(…あらら)
(…照れ隠しなんですよ)
(うん、知ってる)



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