「ちょっと、何してるの」

「何でもない」


即答する名前はソファーに腰掛けるクザンの隣で左足をひたすら撫でる。海軍を辞め、自由に海を走るようになったクザンは自転車を改造して彼女と二人、新世界を気ままに進む。途中立ち寄った島で休んでいると彼女は無言で足を撫でた。


「…何でもないなら触らないの」

「やだ」

「あらら…やだ、って」


何を考えているのかわからない表情でゆったりと撫でる。


「…名前」

「…やだ」


苦笑しながら足を撫で続ける名前の肩を抱き寄せて大人しくした。暫く好きにさせると撫でる手を掴んで無理矢理制止させる。名前の手は冷え、赤くなっていた。


「…こんなに冷やして。ダメでしょう?」

「…クザンが暖めてよ」

「…あらら。そんなこと言ったら本気出しちゃうよ」

「いいから」


真っ直ぐとクザンを見つめる瞳は揺らがず、クザンは溜め息をついて抱き締める。背中に回された名前の細い腕が微かに震えているのを感じると二度目の溜め息をついて強く抱き締めた。


「名前。おれは、後悔もしてねえし、こんなことになってもお前がおれについてきてくれたことに感謝もしてる。…名前が気にすることじゃねえだろ」

「…気にするなってほうが無理だと思いますけど」

「あらら、」

「気にしたところで何も変わりませんし、わかってるんですけどね」

「……」


クザンの服に皺が刻まれる。
もうどうにもならないことくらいわかっているはずなのに、と思いながら縋るように抱き締めた。


「…クザン、ごめんね。ありがと。もう大丈夫だよ」

「…そう?ま、不安にさせるのはおれだし、名前は謝らなくていい。…おれこそ、ごめ、んっ!?」


謝罪の言葉は名前の唇によって塞がれ、目を見開いたクザンは口付けを受けている間硬直することになる。


「…ん、…クザンのごめんねはいらない」

「………、オジサンとてもびっくりしたよ」

「ふふ、」


名前はイタズラっ子のように笑うと再び抱きついた。







(…ありがと、名前)
(今まで心配させた分もっと感謝しなさい。そしてもっと私を甘やかしなさい)
(はいはい、仰せのままに。…じゃあ、まずは一戦いっときますか)
(え?!ちょ、)
(積極的な名前に勃った)
(!!!)



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