草原に大剣を背負った男と、少女と呼ぶには大人びた、女性と呼ぶにはまだ幼い女が立っていました。
二人は何をするでもなくただ地平線を眺めています。そこにざっと風が吹き、男の帽子を攫いました。
あ、と、女は小さな声で呟くと帽子目掛けて走って行きます。男はそれを一瞥し、ゆっくりと歩き出しました。

風は強く、帽子は宙で揺らいでいます。
あと少し。女は大地を思い切り蹴り、帽子を掴み取り草原に落ちました。
その場所へ男が近付くと、帽子取りました、嬉しそうな声が聞こえました。


「…そんな必死にならなくとも…」

「ミホークは目と剣の次とか次々位に帽子が印象的だから」

「…そうか。怪我は無いか、名前?」

「大丈夫よ」


ミホークと呼ばれた男は名前と呼ばれた女が帽子を抱えながら寝転がっているのを確認しました。
疑問に思いながらも名前の横に座り込みます。


「…大地が恋しくなったか」


そう問えば、違うわと返ってきました。ならば何故起き上がらないのかと帽子を抱えている名前の頬を撫でながらまた問います。


「…なんとなく、よ」

「そうか」


頬を撫でていた手が頭に移動しました。名前はにっこりと笑いながら目を閉じます。
ミホークもいつもよりは大分柔らかな表情で撫でています。


「…ミホークと過ごすこの時間が一番幸せだわ。ありがとう」


名前はとびきりの笑顔でミホークを見上げました。
それを見たミホークは顔を少し赤くして、


「…おれも名前には感謝している」


そっぽを向きつつ呟きました。



ありがとう!


(ああそれと、)
(ん?)
(良いものを見た)
(…え?)
(今日は黒にレース付きか…)
(……っ?!)
(飛びかかった瞬間は色気が少々欠けていたが、…ふむ。今の状態ならば)
(想像するな!)


10/04/19/ 5000Hit
Thanks…!
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