「ミホーク、どういうことなの」

「どうもこうも…おれが訊きたい。帰ってみたら二人が居着いていたんだ」

「こんな寂れた城に女の子が来るなんて…」

「…勘違いするなよ」

「私ってば何てラッキー!」

「…は…?」

「しかも可愛い。ミホークと一緒だと綺麗な人にしか会えなかったから嬉しいなあ!」


ああ…そうだ。名前はそんな奴だったな…と、頭を抱えた。名前は同性が好きなんだそうだ。勿論、そんな意味ではなく…萌えとかなんとか言っていた気がする。


「…暫くは置いておくが、変な気は起こすなよ」

「まさか!ちょっと親しくなるだけよ」

「それが変な気だと…」

「ペローナちゃーん!」

「…ハァ」


名前は嬉々として部屋を出て行った。暫くして叫び声が聞こえたが、おれは気にしないことにする。


「てめー!鷹の目!アイツ止めろよ!」


…ひょっこりと、床からゴースト娘の顔が出た。特に驚く訳も無く、溜め息混じりに知るかと答える。


「薄情者!」

「何とでも言うがいい。そんなのんびりしていると」

「居た!ちょっと本体何処に隠したの?」

「ヒイイイ!」

「…見つかるぞ」

「遅い!何なんだよ!何で付きまとうんだよ!」

「可愛いからに決まってるじゃない!」


…笑顔で答える名前にゴースト娘は呆然とした。


「あのね、可愛い服があるんだけど…私一人でファッションショーしてもつまらないし、ペローナちゃんも着ない?」

「…か、可愛い服…?フリルとかレースもついてないと認めないぞ」

「勿論ついてるよ!」

「!…じゃ、じゃあちょっとだけ…ちょっとだけ付き合ってやる!すぐに戻るから部屋で待ってろ!」

「うん、待ってる!」


……。おれと居る時でさえ見せない笑顔で見送る名前が気に食わん。


「…ふふ」

「…なんだ」


振り向いて悪戯に笑った。


「ミホークが嫉妬なんて」

「していない。さっさと部屋に戻ったらどうだ」

「着替えたらまた来るね」

「…フン」


…我ながらわかりやすいと思った。ドアノブに手をかけた名前に近寄って肩を掴んで振り向かせ、強引に口付けた。


「っん、ミホ、んぅ…!」


押し退けようとする手が服を掴んだ頃、唇を離す。息が荒い名前の額に軽く口付け、行ってこいと促した。


「ばか…!」

「行かぬのならば続きをするが」


そう言うと慌ててドアを開けた。…と、不意に。


「……!」

「お返し!」


名前が背伸びをし、おれに口付けた。…バタンとドアが閉まる。


「…可愛いことを…」


自然と口角が上がった。今夜は抑えられる気がしない。服を汚さずに出来るかが問題だ。








(どうしたんだ?顔赤いぞ)
(そっ、そんなことないわよ!さあ着替えましょう!)
(わ、これ全部お前のか?)
(可愛いでしょ?)
(可愛いなあ!ホロホロ…!)
((…ん?あれ、何か嫌な予感がする))
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