ミホークはふらりとシャンクスの元を訪れた。シャンクスは驚くわけもなく向かい入れ、いつものように宴を始める。 「時に鷹の目。何の用だったんだ?」 「…用など無い。ただ暇潰しに貴様等のふざけた宴が見たかっただけだ」 「はっはっは!!何だ、独りが寂しかっただけか!」 「ククク…!お頭、そんな、鷹の目に限ってそんなこと」 「…そうとも言う」 「「!!?」」 「…冗談だ」 一瞬宴が固まり、また再びわいわいと騒ぎ始めた。 ベックマンはマジマジとミホークを見、シャンクスは固まったまま動かない。 「…どうした」 「いや…鷹の目がそんな冗談言うなんて…なァ、お頭」 「……お、おお…お前がどうしたんだ鷹の目…?彼女と喧嘩でもしたか?」 「……喧嘩なぞ」 「「喧嘩したのか」」 「…………喧嘩ではない。ただ名前が一晩居ない、それが落ち着かず出てきただけだ」 グビッと喉を鳴らして度数の高い酒を飲み干していくミホーク。ベックマンは止めようと動いたが、シャンクスは面白いからとどんどん度数の高い酒を飲ませてく。 月が傾き始めた頃、ミホークは今までに無いくらい酔い(シャンクスいわく、明日は嵐だ)、暫く寝ると言ってシャンクス達の船の一室で寝始めた。 「オイオイ…明日八つ当たりされるぞ…最速で名前迎えに行って来い」 「お頭が飲ませたんだろ。まぁいい、了解」 次の日。 ミホークは最低な気分で目覚めた。起き上がってみれば頭はズキズキ、体は重く。オールバックの髪を少し掻けば、はらりと髪が落ちた。 「…赤髪め、度数の高い物ばかり飲ませて…」 「八つ当たりはやめてよ、ミホーク。はい、お水」 「ん、ああ……名前…?」 「もうお昼だけどおはよう。ベンが私を迎えに来たの」 名前は氷水を渡した。ミホークはそれを飲み干し、氷をかじる。体を冷やせば多少マシになるだろう…そんな考えからだった。 「…もう、あんな無謀な飲み方やめてね」 「聞いたのか」 目頭を押さえて俯けば名前は心配そうに顔を覗き込んできた。名前の頭をそっと撫でてやると笑顔になる。 ミホークは名前の口元に人差し指をあてがい、話すな、と唇を動かした。 「…昨日はすまなかった。たった一晩だというのに…」 指が唇をなぞり、頬を伝って顎に触れる。クイッと軽く上向かせ、今度は親指で唇をなぞった。 「…昨夜は楽しめたか?」 「…少しはね。楽しもうにもベンが来たから」 「…!野暮なことを訊いた」 「冗談だって。楽しめたから大丈夫だよ。…ありがとう」 名前は昨夜、シャンクス達の停泊している島で出会った同年代の女の子達と仲良くなり、パジャマパーティーに招待されていた。 …ベックマンに呼び出され、名前の初めてのお泊まりは途中で終わったが。 「すまぬ…」 「あはは、いいよ。またねって言われたから…う?」 親指を軽く押し込めば疑問符を浮かべ。すぐにあむ、と親指をくわえた。 「…もしや、寝ていないのか」 「…言動の関連性が全く見いだせないのだけれど、寝てないよ」 「…すま」 「ぬ」 「……。このまま出掛けるのも面倒だ。暫し寝るか」 「賛成します」 ごろんとミホークが腕を放り出して寝転び、その横に名前が寝転がった。 「…腕枕って…」 「…何だ」 「…(固くて眠れないよね!)…何でもない。おやすみっ」 「…ああ」 八つ当たりは御免だ (…様子見に来たら二人で気持ちよさそうに寝やがって…こっちは二日酔いで苦しんでんのに) (二日酔いはお頭の自業自得だろ) (あーあ、水でもぶっかけてやろうかな) (…それは八つ当たりだ、お頭) |