『共に行こう』


ミホークは私を真っ直ぐ見つめてそう言った。一匹狼、正しくは鷹だったのにどういう風の吹き回しなの?


揺蕩う


彼の誘いから1ヶ月が経とうとしている。暫く考えたいと答えて現在まで、彼がふらりと現れてはまた去っていくというスタイルは崩れない。
…本当に誘われたのかしら私。1ヶ月も保留していたら催促されそうな気がするのだけれど。


「…また来る」

「…うん、またね」


今日もふらりと現れて、夕食を振る舞って…また、去って行った。ここまでいつものように接されると誘われたのは夢だったのかと思う。
返事をしない私も悪いのだけど、…ミホークと航海に出るということは今の生活を全部捨てて行かないといけない。そう考えるとどうしても返事をすることが出来ない。


「…海賊なら海賊らしく、奪って行ってくれるなら一緒に行ってもいいのに」


何でこんな時だけ私の意志を尊重するのよ。いつも引っ張り回すくせに、こんな時だけ。
そんな言い訳を自分にして、気が付けばまた1ヶ月が経ってしまった。

今日もミホークはいつも通りで、私もいつも通り…接したつもり。


「…どうした、名前」

「…何でもないよ。次はいつ来る?」

「…次?さてどうするか…」


ドア付近で立ち止まり、考える素振りを見せるミホーク。…こんな行動取るなんて珍しい。


「……」

「……」


…そして何か沈黙した。えっ、私何か変なこと言ったかな?ちょっとちょっと沈黙怖いよ…!


「…み、ミホーク…?」

「……」


問い掛けても身じろぎ一つせず腕を組んで目を瞑ってる。なな何があったんだ…!


「ミホー…」

「名前」

「はいっ!?」

「明後日迎えに来る。それまでに決めろ」

「…え、っと…それってこの前の返事をしろってこと…?」

「そうだ。無理矢理連れ出されるか、名前の意志で此処を出るか決めておけ」

「……待ってそれって」

「また来る」


止める間もなくドアはバタンと閉まってミホークは行ってしまった。


「…どっちにしろ連れてかれるじゃん…」

此処に留まるという選択肢は無いようだ。けど、揺れていた心はもう決まった。






三日後。
(迎えに来たぞ。準備は出来ているな)
(…もちろん。じゃあ行こうか)
(…その前に)
(ん?)
(腹が減った)
(…え、何も用意してないし帰ってくるつもりも無いから食料なんて無いよ)
(ならば買い出しに出れば良いだろう)
(……)
(急ぐ旅でも無しに)
(期限を設けたのはミホークだけど…まあいっか)

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