見慣れた旗が窓から見えた。三本の傷、大好きなあの人の旗。私は港へと急ぐ。

港では見慣れたみんなが上陸していた。息を切らして走り寄ると大好きなあの人が私に気付いて手を広げる。迷わず胸に飛び込んだ。


「シャンクス!」

「久々だな、名前!また一段と女らしくなった!」

「シャンクスは相変わらず!」

「はっは、この歳になると殆ど変わらねェんだ」

「今回は何日位停泊するの?」

「…んー…必要なモン買ったらすぐ出航する」

「…そ、そうなんだ…」

「…で、だな。名前」

「うん?」


何日も一緒に居られないことにショックを受けながらシャンクスを見上げる。目が合うと真剣な眼差しで、…恐いと思ってしまった。


「…今日は最後の別れを言いに来た。おれ達は新世界へ戻る…此処にはもう戻ってこない」

「…そ…んな…」


頭が真っ白になった。海賊と一般人、叶わぬ恋だとわかっていたのに。


「……だから、おれと来い。危険な目に遭うだろうが、おれが必ず守ってやる。名前が好きだと言ったおれの髑髏に誓おう」






………………






シャンクスの言葉から数年。私は赤髪海賊団の船に乗っていた。


「シャンクスー!敵船発見したよー!」

「おーう、野郎共気ィ抜くなー!」


昔から目は良いほうで、見張り台から海を眺める役…もとい、監視を任せられた。と言っても買って出たのは私で、何もしないよりかはマシだと思ってる。一応役立つことしないとね。


「名前!」

「はーいうわ!?」

「向こうは戦闘になるだろうから戻ってきた」

「びっくりした…シャンクスは戦わないの?」

「たまには眺めるのもいいだろ」


そう言って手を繋いできた。


「…あ、敵船の方向変わった」

「あー、これで無駄な戦闘は避けられるな」

「うん、良かったね」


ちょっと恥ずかしくなって手を離そうとすると、シャンクスは寂しそうに擦り寄って私を見下ろす。何も言わずに眉を下げる姿はまるで…


「…こどもみたい」

「!う…名前が離れようとするからだろ」

「だってなんか恥ずかしい…」

「二人きりなんだ。いいじゃねェか」

「…二人きりだからこそ」

「…!かわいいこと言うなァ!」





そんなにおれを喜ばせてどうする!





シャンクスは笑って額にキスをした。








100810






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