「名前、」


いつもより冷たい腕に、背後から包み込まれた名前は肩越しにクザンを見上げた。どうしたんですか、と白い息を吐きながら尋ねる。


「今日、誕生日でしょ?ちょっと面白いのプレゼントしようと思って」

「面白いの、ですか」

「そうそうこれ。おめでと」


クザンの大きな握り拳が名前の目の前で広げられた。手のひらに乗っていたのは氷で出来た小さなプレゼントボックス。中心は白く、外側になるにつれ透明になっていた。


「あ、かわいい。ありがとうございます!冷凍庫に入れておけば溶けませんか?」

「溶けないけど…このまま飾っておいてほしいなあって」

「…溶けたら寂しいじゃないですか」


プレゼントボックスを自分の手のひらに乗せながら「折角クザンさんがくれたのに」と呟く。


「溶けたらおれの所にきなさいな。新しく作るから」

「それだったら冷凍庫で保管したほうが、」

「おれにねだる名前が見たいって言ったら、怒る?」


頭上から聞こえた苦笑混じりの声に驚きながら見上げて首を振った。名前の反応を見てにこりと笑うと離れる。


「明日の朝には溶けちゃうかもだけど、仕事しながら待ってるから。朝一で名前の顔見れるって信じて本部戻るから」

「……仕事抜け出してきたんですか!?」

「だって時間無かったんだもん」

「確かにそうですけど…別に明日でも良かったのに…」

「まあ、過ぎたことはしょーがないから、また明日ね。今夜は冷えるから、暖房もちゃんとつけて寝るように」


振り向いた名前の額に口付けて頭を撫でると玄関に向かい、おやすみと一言残して本部へと戻って行った。
クザンを見送ると戸締まりをし、言われた通りに暖房をつけ、溶けた水が溢れない皿にプレゼントボックスを乗せるとベッド脇のデスクに置く。


「…本当に朝一で作ってもらうんだから」


ふふ、と楽しそうに笑った名前はベッドに潜り目を閉じた。




時計の針が進むにつれて氷は溶け、白い部分も溶け出す。明け方には全てが溶けきり、皿の真ん中には銀色に光るシンプルな指輪が残っていた。名前がこれに気付くまであと数時間……。











マヒロさん誕生日おめでとう!こんなんで良ければどうぞ煮るなり焼くなり…!
マヒロさんのみお持ち帰りOKです。
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