中将の元に来たときはとても頼りなかったのに、今では…。

「おーい!」
「…あらヘルメッポ、…少佐」
「なんだよ、少佐なんていらねえって言ってるだろ」

同じ時期に海軍に入り、私は食堂で働くコックとなった。同期ということもあってコビー大佐とも仲良くやっていたが、働く場所が違う為に段々と顔を合わせることもなくなっている。
それでも、少佐は昼が過ぎ、食堂の人が減る頃に毎日のように来店した。

「こんにちは、今日は何にしましょうか?」
「…いつも思うんだけどよ、堅苦しいよな」
「少佐相手ですもの」

目上の相手には失礼のないように、そう告げると彼は寂しそうな、出会った頃を思い出させる情けない表情をする。…今まで通りになんて接してられない。相手は少佐、もう偉い方だから。

「…えー…すげえ、さみしい」
「……お昼休み終わってしまいますよ」
「今夜空いてる?」
「…急に何を」
「いいから、ほら、定時には上がるから。ね?」

へたれなのか、強引なのかよくわからなくて思わず苦笑する。

「…定時、ですか」
「!、全力で仕事終わらせるから」

ね、と顔を輝かせた少佐は相変わらずわかりやすい。ふと、食堂の入り口を見るとコビー大佐がこちらを見ていた。目が合うと両手を合わせておねがい、と唇を動かす。

「…しょうがないなあ。じゃあ、ヘルメッポ。貴方の定時から一時間だけ待つから早くに来てね」
「ヨッシャァ!!」

ガッツポーズをしたヘルメッポに顔が綻び、案外自分が思っているよりも遠い存在じゃないのだと気付いた。


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