35




「あれっ、凛ちゃんネクタイは?」




「盗まれました。担任に。」




「ええっ?!」




授業が終わり、となりの席の香が爆睡している中、フランシス先生は私のネクタイがないのが不思議だったのか席までやってきた。ああ相変わらず良い匂いですなむふふふ。





「事後、カークランド家に忘れてきたみたいですよ!」



「えっ?」




「ひぎいやあああああ?!ちっがいますかんね!」




「言ってたわよ、…私の脳内で。」



「帰れ。」




「え、どこからが冗談…かな?」



「担任に取られたとこまで本当っす」




真顔でそう言えば前の後ろの湾が小さく舌打ちした。…友達を何だと思ってんだこの野郎。





「まあ大変だったんだね、」



「ううううう大変でしたよでもフランシス先生の笑顔により疲れがぶっ飛びました結婚してください。」




「えええええ。」



フランシス先生の白い手をとってばちこんばちこんウインクをしていたら横から丸めた教科書で頭を叩かれた。うおおおって唸りながら横を見れば眉間にしわを寄せている委員長。





「何を馬鹿な事を言っているんだ!人を困るような事はするなと言っているだろう!」



「ああああ耳がキーンってする!あっ謝るから大声出さないでえええええ」



「俺に謝ってどうするんだ!先生に謝るべきだろうが!」



「耳があああごめんなさいいいい」




ガミガミと鬼のごとく怒るルートの声が耳にキンキン響く。叫びながら前にいる先生に謝れば、楽しそうにクスクスと笑いだした。




「ううん別に気にしてないからルートくんもあんまり怒らないであげてね」



「し、しかし…」



「ふふ、何だか見てたら微笑ましいな、」



「フランシス先生の笑顔激写!」



「ぎゃあああああナイス湾!焼き増し頼んだ!!」




「貴様らあああああ!!」




「ぎゃあああああ耳が逝ったあああああああ!」




「凛の耳、私ずっと忘れないわ!犠牲になってくれてありがとう!」




ぎゃあぎゃあ騒ぎ始める三人を見てフランシス先生は笑いが止まらないらしい。こんなに笑っているのはカリエド先生とギルといる時しか見たことがない気がする。





「まあ凛ちゃん、アーサーには俺から言っておくよ、」



「あああありがとうっす!エンジェル!!」




「はは、じゃあまたね」




「アデューアデュー!」




投げキッスを繰り出す私はまたもや委員長の丸めた教科書にやられた模様。そんな騒がしい私達を見て笑っているフェリクスと失笑しているトーリスもいれば、ぴくりとも動かず寝ている香もいた。…え、生きてる?






(香生きてるのこれ)
(どうなのかしら、つついてみる?)




0122