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「凛」
「ルート?どした?」
「今日…付き合ってくれないか?」
主婦の戦場
(油断も隙もありゃしねえ!)
放課後、突然真面目な顔した…うんやいつも真面目な顔してんだけどね。まあルートがそう言って一枚のカラーの紙を私の前へと出した。
「…安いもの市?」
「ああ、激安スーパーがさらに安くなるんだ。前、凛が行きたいっていたから…」
「わああ待ってたよ!…ふはははは、この日のために毎晩イメージトレーニングをだな…」
「いや想像を越えるレベルだ。もしかしたら内臓が破裂するかもしれない。」
「レベル高?!」
…そんなこんなでやってきました激安スーパー「もやしくん!」…え、これツッコミ選手権?!うはあ負けた、五秒固まった私は負け組だ。
「何を止まっているんだ、早く行くぞ!戦いはもう始まっている!!」
「い、いえっさあ隊長ううううう!!」
きりっという効果音が出そうな顔をした彼とすでに主婦の方々でいっぱいな店内へ入る。中はもう仰天だ。商品の値段札にいちいち驚いてしまうよ、え、ぽてち20円でいいの?!え、まだツッコミ選手権してんの?!
とか考えていたらががっと機械音が耳に入る。きたぞ、凛とルートが言うから身構えてしまう。
『ただいま、精肉コーナーにて、お一人様一つ限定、胸ももにくが、なんと10円!』
「凛っ!!走るぞ!!」
「う、はいさあ!」
精肉コーナーへ全力疾走。あらまルート失踪!…いや断じて私が足遅い訳じゃないかんね、ルートが速いだけ、うんそーだよ元気だせって凛!
「うふふ元気100%よ!新しい顔をありがとう!…って人多?!!」
やっとついたと思えば精肉コーナーには主婦…の皮を被った野獣が私の私の肉ううううう?!と言わんばかりの勢いで前へ進む。…こえええええええ?!
「いや、私は行くわ、むしろ逝くわお母さん見てて私の最後を!」
どおりゃあああああとつっこむ。…まあ予想はついてたよ、挟まって終わりだ、と。ああ苦しい…でもこれで死ぬのはやだなあ。だって死因「主婦という皮を被った野獣に挟まれ窒息死」とか恥ずかしい!あと今目があったおばちゃんA、お子様は家帰ってチョコでもちゅっぱちゅぱしてなみたいな眼差し送ってきた!ちくしょう!
「…」
「大丈夫か?」
「ハ、ハハ…ハハ燃え尽きたよ、もうちっりちりになるくらいさ、」
「しっかりしろ、凛!次はきっと白菜だ。で次が洗剤。最後に鰹だ。」
「把握してらっしゃる!!」
感動して彼を見る。かごにはちゃっかり胸ももにくが2つはいっていた。…あれ、何かこの扱い酷く…ないか?とれないのを想定されとるううう
「つっ次はとる!」
「その意気だ!」
*
「ぐふお…ぐう…つっ次こそは洗剤を我が手にいい…」
「だ、大丈夫か?」
*
「…シヌカモー」
「次でラストだ、最後まで気合いいれるぞ!」
…今日は肉体的ダメージ56348くらってしまった。生気がぬけきって「もやしくん」の前で座っていると、会計を終えたルートがでてきた。
「凛のおかげで二倍買うことができた。…感謝する、」
「う…」
「…だが申し訳ない…な、悪かった。」
罰の悪そうな顔をしてきっちり礼をして謝る彼にいやいやと手をふる、
「私が駄目だっただけ!ルートは悪くないよ!」
「しかし…」
「次こそは一つでもいいからとってみせるぞお!」
「…は?」
「…だから、次も誘ってね!目指せもやしくん王者!」
ふははははと上を向いて笑っていると固い表情をしたルートの顔も柔らかくなった。
「うむ、ではみっちりトレーニングだ!」
「おす、隊長!」
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