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「せーんせっ!」



「あと1分遅かったら問題二倍にするとこだったぞ」



「あらやだ先生」



「まあいいから座れ」




英語教官室の前の少人数教室に待ち構えていたのはおなじみの我が担任。本当に一対一だとは思ってなかったよお腹鳴ったらばれるじゃないか!ぐーきゅるきゅる…



「…」



「…」



「おま、」



「先生!気をつけて下さい!!近くにテロリストがあ!!」


「いやお前のお腹ん中な。それより早くやるぞ?」





目の前に出されたのは長ったらしく連なる英単語がぎっしり詰まったプリント。んんんー?先生は私を殺す気かなー?無理だよー?




「無理っす!」



「いきなり無理ゆーな、ほら、教えるから、」




シャーペン片手にぐぎぎぎとプリントと睨めっこする私に先生の顔が近くなる。なんちゅー乙女ゲームなんだ…!?ちょ、良いにおいがする!女の私より良いにおいがするううう?!





「…先生って細いですよね」



「…何でいきなりそういう話になったんだ。」



「いや、腕とか…パッと見細いなーと思いましてね!」






「…」







だって本当に細いんだよ。カリエド先生と比べたらすごい差!はああんカリエド先生の背中…!あの体付きがたまりませんなぐふぉふぉふぉ








「うへへへカリエド先生の腰回り…!あー落ち着かないでおっけーだ春日凛!!!」






「、カリエド?」






「はい愛しのダーリンです。うっはー言っちゃいましたよ!!秘密ですからね!はい指切りげーんまーんっ」







「生徒と先生の恋愛は禁止されてるんだからな?」







「禁断の恋いいいいい?!!あっ、駄目よカリエド先生…!!」





右脳がようこそ妄想ワールドへ!ってなっていると目の前の先生が日誌で私の頭を叩いた。







「痛いです先生!」



「いいから勉強するぞ!邪念は捨てろ」






「捨て切れない場合は?」





「プリント追加、だな」





「頭の中キレイキレイしたんでいつでもばっちこいです。」






「そうか、じゃあここからだ」




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「っあー!!終わった!一生分の英語力使ったー!」





「ははっ、」





「お、先生笑いましたね!」





「なっ、何だよ、笑ったら駄目なのか?」






「いえいえ!細いって言ってから怒ってるかなーと思いましてね!」






シャーペンと消しゴムを筆箱に入れながら先生に笑いかけると頬杖をついて面白くなさそうにそっぽを向いた。…ちょ!先生いちいち動作が可愛いな!!








「男は細いって言われてもあんま嬉しくねーよ」





「えー私細いって言われたいっすよ!」





「性別が違うだろ?」





「まあそうですけどー…ってちょ、今何時ですか!?」







そう言うと左腕を見た先生が今の時刻を声に出した。やややややばいよプリントに夢中で菊先生の所に行くの忘れてたよ確実に絞められるよ!首!








「っじゃあ先生また明日!!」





「何かあるのか?」





「菊先生にも呼び出しくらってるんですよ!じゃあ、さいならっ!!」






リュックを背負って勢いよくドアを開けて廊下へ出た。消しカスの残った机の上にぽつんと筆箱を忘れた部屋で、









「…細い、とは失礼な奴だなあ、あいつと比べやがってよ?」






くっくっと笑い声が響いた。







(ぐぎゃあああ先生すんません!)
(ふふふふ凛さん
絞められたいのですか?)
(いやだからごめんなさいって!)
(ごめんで許すなら警察など
いらないのですよ?)
(文句はカークランド先生に!!)



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眉毛は猫かぶり。
親分は白さ100%


0907