安らかにお眠りなさい
カンカンカン、
私は今日もこの金属音で目を覚まします。
私が実家を出てきた一年前からこの音が私にとっての目覚まし時計になりました、通常の時計よりやけに騒がしいのが難点なんですけれど今ではもう慣れたかな。
そんな私は朝に弱くて布団の中で一定期間もぞもぞと動いて再び眠りにつくのですが、それを何の躊躇もなく…というより無自覚に邪魔するのがあの金属音を放つ主の言葉なのです。
「みのむしちえ〜朝やぞー」
「うううあと37分で…」
「そないな事言っとらんとはよお起きいな」
うーうーと唸って布団の中から出ようとしない私の耳には、あくまでも無自覚に私の眠りを遮る彼のおはようの歌と、しえみちゃんを見習えみのむし〜というもう一つの声が。朝だ、あっさっだー!って何ですかその歌、寝坊助みのむし!…しつこいですね!
…あああもうやかましい!そんなにうるさくするなら私にも考えがありますよ!
「昨晩せっせと描いた金柔本を売り出しちゃいますからね!大々的に!」
「んな事しとらんとガキははよお寝えや!」
「いっ、?!」
布団から勢いよく出て目を輝かせてそう言う私の後頭部にごつん、と拳が落ちる。先ほど聞こえた声は遠かったはずなのにいつの間に目の前に…!しかも茶碗とお箸装備ですか。
「痛いです…私の貴重な脳細胞が死滅しました金造さんの暴力っ」
「暴力はあかんえ金造!おーおーちえ大丈夫か?ほおら痛いの痛いのブラジルまで飛んでけー」
容赦ない金造さんの一発のおかげで目はばっちり覚めましたが脳細胞はばっちり消えました。ふんっと鼻を鳴らして居間へと戻っていく金造さんから私を庇うように不思議な言葉を発する彼はよしよしと私の頭を撫でた。
「痛ないか?あいつちえには容赦しいひんさかい、困ったなあ」
「柔造さん…」
「ん?」
「あの、その…」
「なした?言うてみ?」
「私は柔造さんが金造に撫でられて喜ぶ所を携帯におさめたいのですが、!」
「俺が金造に?あっはっはちえはおもろいこと言うなあ、ほらご飯冷めるさかい、はよお食べるよし」
何もわかっていない柔造さんはニコニコと笑いながら最後にぽんぽん、と頭を軽く叩いて畳の上に置いていた金属音の正体、中華鍋とお玉を持って台所へと戻っていった。
私はチッと小さく舌打ちをしてから布団をめくり、立ち上がってよいしょと布団を三つ折りにして隅に寄せているしえみちゃんの布団の隣りに置いてから居間へと足を向かわせた。
(お弁当完成させな!)
(朝ごはん何でしょうかね)
▽▽
京都弁ってこんなに難しいものなんですか…?!非似で申し訳ないです、予想より大分普通な一話になっちゃいましたがそのうち暴れさせたいです。とにかく70万打ありがとうございました!
0810