将来不安症な俺と



目の前には大学の課題と右側のレンズの割れた眼鏡。あの不思議な出来事から一週間が経ち、俺は相変わらず大量の課題をこなしていた。途中でむしゃくしゃして眼鏡を地面に叩きつけてしまったが。



あの出来事は夢だったのかもしれない。現実を、この国を見ないようにしていたからこその幻想だったのかもしれない。



(…めんどくさいな、)



頬から伝わる床のひんやりとした冷たさが薄らいで体温と化した。勉強なんて、人生なんていっそ投げ出してしまいたい!と願うくせに、そんな事をしたら将来が不安で仕方ないと震える自分がつくづく嫌になる。



(本日午後2時頃にk/6通りで再び派閥同士の争いが起こるということが、)



まるで死人のように床へ横たわっている俺は目を開けてすぐさまニュースにかじりついた。k/6通り、派閥、争い…前と同じ状況だ。



好奇心半分、恐怖半分の俺は何を馬鹿みたいにニュースにかじりついてるんだと鼻で笑って落ちた眼鏡を手にとって机の上に置く。ほんと、馬鹿だ俺は。




「…」



あの女は今日もまたバイクをかっ飛ばしてk/6通りに来るのだろうか、あんな細い腕であんな大きな銃で黒い機械を打ち倒すのだろうか。世間体を気にせず「国民を守る」とか言って自分の道をまっすぐに歩いていくのだろうか。



…ああ、馬鹿だ、馬鹿だ。そんなことをして一体何になるんだい?もしかしたら死んでしまうかもしれないのに、国家からのけ者扱いされてしまうかもしれないのに。机の上を見つめて下唇をきつく噛むと小さな痛みとともに温かいものがあごを伝った。




▽▽



PM2:00、俺はk/5通りにいた。あれだけ思っていたが時間が近づく度に落ち着かなくなり、スペアの眼鏡をかけてついに家を飛び出してしまった。



(…見たらすぐに帰るんだ、すぐに…。)



あと数メートルでk/6通りの場所で挙動不審に歩き回っていると五歳くらいの一人の男の子が危険地帯の方へ走っていくのが目に入った。



(っ?!)



思わず駆けてしまいそうだったが心の周りにこびりつく俺の利己心がそれを止めた。あの時は助かったが次はないかもしれない、あんな見ず知らずの子供一人のために差し出す命なんてあるわけがない。



「…俺は、悪くない。俺は悪くない、何も間違っていない。」



だんだん荒くなる呼吸を整えようと必死になればなるほど心臓がばくばくと速さをます。落ち着け、落ち着くんだ俺…と言い聞かせていたその時に聞こえた爆発音により俺は無意識的にk/6通りに向かって走っていた。



0720