これは本当に祖父なのか
ごく普通の公立高校でエンジョイライフとやらを楽しんでいた私の生活は一変して、あの有名な正十字学園の制服に身を包んでいる男の前に立っていた。そして何故かはまったくわからない、いやわかりたくもないんだけれども私、知らない人に首輪つけられている。
話が遡ること数時間前、高校から家までの帰路で変なおじさんに出会った、と思ったら私と血の繋がりのある祖父でどうしようもない感情に悩まされたのだ。祖父が変なおじさんって何か嫌じゃないか、変な父や変な母よりは幾分はマシだろうけど…っと話が脱線した、とにかく小さい頃から今の今まで会わなかったから顔はまったくわからないが、父さんと母さんから1つだけ祖父について聞いていた、「祖父は祓魔師」だって。
確かに格好はそれっぽい、いやいまりちょーっと待ってみようか、ハウスで尻尾振ってビーフジャーキー待とう。もしかしたらこのいかにもそっち系な服はこのおじさんのコスプレで、さらにこのおじさんは本当は私の祖父ではないかもしれないぞいまり、うんうん良い推理だ悪くない将来は探偵事務所でも開いてみようか。
「いまりちゃんの頭じゃあ探偵業はちょっと難しいだろうね」
「な、何でわかったんですか…はっ?!もしかして貴方コスプレ好きな心理学者さん…?!」
「はは、この年になるとコスプレに見えちゃうかな」
それと全部声に出てたからね、と穏やかな顔つきで言われ、はっとして両手で口を覆った。プライバシーだだもれじゃないの、
「いやあ…大きくなったもんだね」
「あー…まあ育ち盛りなんで」
そうかそうか…と感慨深そうに相変わらずの笑顔で頷く祖父もどきさんは私との間を一歩で詰めてポッケから何かを取り出しては私に差し出す、…鍵?にしては中々見かけない形をしている。ま、まさかこの祖父もどきさんの家の…?!
「いまりちゃんに誕生日プレゼント」
「私の誕生日あと半年後だったりします」
「…第3木曜日粗大ゴミ記念日のプレゼント」
「ぶぶー、正解は燃えないゴミの日です。」
「うん、じゃあ…それで。」
「いや…さすがにおじいちゃん家の合鍵は…」
「はは、私の家じゃあないよ。…その鍵はどんなドアにでも使えるんだ」
「?」
「お家に帰ったら使ってみてね」
「は、はあ…」
それからはもう本当に風のように去っていった祖父もどき(いや、本当にあの人誰)を呆れた目で見送った後、手にした鍵を食い入るように見つめながら家まで足を進めた。
▽
「ただいまー」
自分の家の鍵を鍵穴にさしてドアを開けると中から「おかえり」と母の声が聞こえて一歩入って一旦停止、後に一歩下がる。
(「その鍵はどんなドアにでも使えるんだよ」)
「…」
訝しげな顔つきで鍵と家の鍵穴を交互に見つめる。形がまったくもって違う、あの爺さん嘘かやっぱり、と思いながらもほんの少しの好奇心に負けてその不思議な鍵を鍵穴に突っ込んでみた、
「あっはっは、やっぱり入る訳な…って嘘おおお?!」
「…」
ごくり、と唾を飲み込んでゆっくりと回せば、カチっと聞いた事のない音が聞こえる。何故か速まる心臓の音を無視してドアを開ければ目の前に広がるは見慣れたいつもの家ではなく、見たことのない部屋、と見たことのない人。
「えっ、あれ、あー…誰ですか」
「…」
「わっ私はそのー、怪しい者とかじゃないっすよ、ふとどきものです…って違う!」
何1人でノリツッコミやってんだ私、明らかに不審者だふとどきものだ。しかもこの人知らない女が突然来たにも関わらず表情一つ変えないし何も言わないし何かこっち来たし何か首に…って、あれ?
「いや…何で首輪」
何が何だかわからない私に目の前の男はにっこりと笑ってみせた、おっ、何だかいい人そうだ…
「貴女が逃げないように、ですかね?」
前言てっかーい!駄目だこの人、やばい人だ、私の全細胞が逃げてええって泣き叫んでる。助けて、助けてお母さーん!
Q これは本当に祖父なのか
(予想はnot親戚コスプレ爺さん)
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