むかしの本田さん
「日本さん日本さん。」
「…?」
「さりげなくお尻触らないでください、訴えますよ。」
「訴えれるなら訴えてごらんなさい。」
「はいじゃあ警察呼びますからね。」
くつくつと笑う本田さんと瓜二つなこの人は、なんでも昔の本田さんみたいでカークランド氏の不思議な魔法によって本田さんと入れ替わったんだとか。
よいしょ、と立ち上がろうとする私の腰にするりと手を回して後ろへと引く彼によって重心が狂い、しりもちという形になってしまった。
「いっ?!」
「まあせっかくですし…ねえ?」
「なーにがねえ?ですか。離してください。」
「嫌だ、と言いましたら?」
「傷の出来ない程度に殴ります。」
「傷の出来ない程度に…ですか。今の私と何が関係でも?」
彼の腕の中にすっぽりと埋もれている私を良いことに、わざと耳元で喋りだす。ああ、むず痒い。首が、ぞくぞくする。
「おや、耳は苦手で?」
「別にそんなんじゃないですー。」
「ふふ、強気な女は好きですよ?私。」
「日本さんの好みは興味な、ひっ…やっ、」
耳をなぞるように生ぬるいものが這い、喉の奥から音が漏れる。ああ本田さんにはこんな事されないから慣れてない。
「今の私はどんな人ですか?」
「…、優しくて穏やかな人です」
「おや、私も随分丸くなりましたね。」
「やっぱり顔は同じでも全然違います、」
「ふふ、やはり貴女はいいですね、好みです。…調教しがいがありそうで。」
「断固拒否致します。」
「これからよろしくお願いしますね、なまえ…さん?」
「早く帰ってください。カークランド氏呼びますから、」
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