ガキと爺の攻防戦
最近少し暖かくなって何だか春の匂いがしてきた。桜のつぼみはまだ閉じたままだけれど、梅の花は春の訪れを象徴するかのように枝の先々でほのかに赤いそれをさらけ出している。
「もう春ですね、」
「そうですね…だからといってそんな格好でごろごろしないで下さいなまえさん。」
「そんな格好って…ただ足と腕に布がないだけじゃないですか、」
「女性として恥ずかしくないのですか」
まったく…と呆れた表情をしている菊さんがいなくなったかと思えば、何か布のようなものを持ってこちらへやってきた。菊さんのことだ、「春をなめないでください」とかなんとか言って私にかけてくれるのだろう。ふふ、私菊さんのそんな優しい所大好きです。
「よいしょ、」
「…」
「日が暖かいですね。」
「…え、私に掛けてくれるのでは」
ぎぎぎ、とロボットみたく顔を横に向けると、菊さんは私の横で布団に丸まってポチくんにもふもふしていた。あ、ポチくん私にはもふもふしてくれなかったのに、
「…はい?何故私がなまえさんのために」
「ひ、酷いです菊さん!私寒いです!」
「なら服を着なさい服を。」
「嫌ですその布団が欲しいですついでにポチくんにもふもふしたいです!」
「自分のことは自分でしてくださいよ。」
「うう…ケチ、爺の阿呆、ばー…っげふっ」
急に腹部に鈍痛が。事態を把握出来ていない私は、何かと自分のお腹を見れば、浴衣がはだけて露になった、白い足が私のお腹に直撃しているではないか。
「…口の聞き方がなっていませんねえ糞ガキ」
「ううっ痛いです、ガキにこんなことして恥ずかしくないんですか!」
「別に屁でもないですが…」
「っくっそ爺め、おならしやがっ…いったい、痛い痛いすみませんだから離してくださあああ冗談言ってすみませんんんん?!」
「はあ…どこで育て方間違えられたのでしょうかなまえさんのお母様方…」
「痛い痛い関節入ってますよいぎゃあああああ」
(ポチくん、おいでおいでー)
(ポチくんに触らないでください私のポチくんです。)
(ははははは、復讐がてらポチくんにもふもふしてやらあ…)
(おやまだやられたりないようですね糞ガキ。)
(調子に乗らないでくださいよ糞爺)
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いつもと違う菊さんが書きたくて書いたら何だか斜め上にいってしまったという。
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