笑顔の一番勝負!




「なあなまえ、アル」



「はーい?」



「何だいそんな真剣な顔しちゃってさ、明日眉毛でも降るんじゃないかい?」



「わっきもい!」



「いいから聞けよ馬鹿!」




へーい、と声を揃えてめんどくさそうに返事をすれば、こほんと一つ咳払いをして私たちに少し近づいて人差し指を立て、声を小さくして言った。




「お前ら本田が喜んでるの見たことあるか?」



「…は?」
「何そんなふさふさしたこと言って…眉毛だけにしてくれよまったく。」



「お前は俺を馬鹿にしてんのか」



「馬鹿にしてんのはアーサーでしょーに、本田さんは私に会えばいつも喜ぶでしょうが!」



「なまえ自意識過剰乙だぞ。菊は君なんか興味ないよ絶対」



「今すごくその髪のくるん引きちぎってみじん切りにしたくなった!あと眼鏡の上からハイパー目潰し。」



「いやそれ指が痛いだけだからやめとけなまえ。」



ああだこうだ言ってみたが、確かにアーサーの言った通り本田さんの喜んだ顔見たことないような気がしてきた。…あれ、これなんかすごく…悲しくないか?仲良いと思っていたのにこれは精神的に辛いものがあるぞ。




「そこでだ、誰が本田を喜ばせる事ができるか勝負しようぜ」



「hahaha、俺が負けるわけないじゃないか!」



「その勝負のったあああ!絶対に私が勝つんだから!」



「じゃあ負けた奴は勝った奴の言うこと一つ聞く、ってのはどうだ?」



「構わないよ、俺が一番だからね!」



「ちょうど来たみたいだし、ここはレディーファーストでどうぞ?」




高笑いする眼鏡と自信満々な眉毛には絶対に負けたくない。きっとこいつら二人は単細胞だからゲームでつるか食べ物でつるのだろう。これだから単細胞は、デリカシーのなかい!!私が手本を見せてやろうじゃないか!!





「あ、本田さーん!今晩私と(ピーバキューン)しませんかー?」
「おまあああああああ?!!」
「君が一番単細胞じゃないかああああ?!!」



「…はあ?」



「くっ…私の負け…ね、」



「馬鹿だこいつ正真正銘の馬鹿だ。」




地面に悩ましげなポーズを決めて寝ころがれば、三人の男に軽蔑に近い視線を送られる。普通なら色仕掛けで落ちない男はいないって、フランシスさんが力説してたのに!ええ声で誘えばトニーさんが興奮してたのに!!




「お前二度とあの変態コンビに近づくなよ絶対だ。」



「なまえに変な知識入れちゃって、どうしてくれようか」



「一体何なのですか、今のは。」



「ああ、今のは幻とでも思ってくれ。」



「それより菊!この間君のとこのお菓子を真似てこんなの作ったんだけどどうだい?!」



かなり引き気味の彼からなまえを見えないように立ち、作り笑いをして気にしないでくれと言い続けるアーサーの言葉を遮ったアルフレッドが、にこにこと笑って蛍光色のお饅頭みたいなものが写っている携帯の画面を見せれば標的の彼、本田菊の顔が見たことないくらいにひきつった。



「え、遠慮します。」



「は、ざまあねえな!」



「何でだいこんなに美味しそうなのに?!」



「そんな青い饅頭宇宙人でも食べないよ、私の方が嬉しかったですよね本田さん」



「私はノーコメントで。」



「お前らじゃやっぱり駄目だな!やっぱりここは俺が…」



「食べ物は駄目だぞさすがの菊でもアッパーとんでくるからね」



「アーサーの食べ物はもう食べ物とは呼べない爆発物、…もはや凶器。」



「アーサーさん誠に言いづらいのですがそれは遠慮しておきます。」




「ちげえよばかあ!」




これだけ言われて少し傷ついたのか涙目の彼が出したのは綺麗な封筒。しかも3つ。しかも私たちにも、…まさかこの中に爆発物が?!!




「入れるか!!」



「ですよねー。」



「で、これ何だいアーサー?」


「しょ、招待状だ。…に、庭の薔薇が綺麗に咲いたから本田に…お、お前らはついでというか…」



「素直じゃないなあアーサーは、こんな勝負ひっかけたのは全部これのためかあ、やるねえ英国エセ紳士。」



「気持ち悪いよアーサー!」



「う、うっせえな!」




けらけらと顔を真っ赤にして怒るアーサーを笑う私たちの横で、封筒を見つめてきょとんとしていた本田さんが少しずつ口を緩ませて優しく微笑んだ。そんな彼を見て口を開けたまま呆けていると微笑んでいた彼が我にかえったのか、あの…その…とどもりはじめる。




「ああ…ええと、アーサーさん達さえよろしければ…ぜひ。」



「本田さんが…」



「笑った…!」



「…はい?」



「ちっくしょー負けたー!仕方ないから行ってあげるよアールグレイ用意しててね!」



「アーサーの一人勝ちかい、俺も仕方ないから行ってあげるよ!スコーンはいらないからね!!」




「え、あの…どういう?」




「…いや、気にしないでくれ。つーかお前ら負けたくせに態度でけえんだよばーか!!」




最後には声を荒げる彼も勝負について知らない彼も君のスコーンは不味いからねと言う彼も私も自然に顔をくしゃりと笑っていた。




(ではお菓子といってはなんですが何かお饅頭でも…)
(紅茶に饅頭ですか本田さん。私がクッキーでも…)
(いや俺の青い饅頭が合うと思うよ!!)
(あわねえよ!)

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久々に複数で。ごたごたぐだぐだ。


0410

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