正しい人助けの仕方 | ナノ

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――一人で居ないと、ペンキ仮面は狙ってこないみたいだから。



部室で、そうニックネームが説明すると、特にヒメコは納得がいかない顔をしていたが、おとなしく皆帰宅した。

しかしこれは、作戦のうちであって、一回解散した後にメールを入れて、本当は二人とも学校にまだいる。

ニックネームが一人になったフリをするためだ。

はあ、読みが当たるといいんだけど。


部室に一人残されたニックネームのケータイに、スイッチからメールが入る。



[ロッカーを開けてみて(・∀・)b]



ニックネームは言われた通りに、ロッカーを開けてみると、ニックネーム用と貼り紙の書かれた段ボールがあった。

これかな?ニックネームが首を傾げると、すぐさま[それだ!]と返信が入る。

スイッチ、指示通りに動いてよ。

なんでまだ部室の傍にいるの。


ニックネームの数少ない陣地である長椅子に腰掛け、段ボールを開けてみる。

中身は―――開盟学園の男子用の制服だった。

部活勧誘の時と同様、サイズはピッタリ。

上は半袖シャツで黒いアンダーシャツまであり、ズボンは何故かハーフパンツになっていた。



[念には念を、ダヨ(^皿^)]



ああ、これならもしペンキを被っても、大丈夫ってことか。

良かった良かった。

ニックネームが一人、囮になると告げると、中々納得してくれなかったヒメコも、これなら納得してくれるだろう。


ニックネームはスイッチの優しさを噛み締めた。

まあ、なんでサイズを知ってるのかとか、なんでこんなものを用意してあったのかとか、もう気にしない。

優しくて、用意周到だってことにしておこう。















夕暮れ、倉庫の前に佇む一人の男子生徒―――否、男子用の制服を着た女子生徒。

背後から必死に息を殺して忍びよる影は、その姿に一瞬身構えるも、赤いツノ帽子とゴーグルが見えると、安心したかのように肩を撫で下ろした。


頭の中に浮かぶ会話。



(一人で大丈夫なん?ニックネーム)

(うん、任しといて)




早く鳴り響く心臓は、一向におさまらないが、思い切って走りだした。

その時、少し女子生徒が振り返った。



『なんてね』



―――ガサッ


影の背後で、影が動く。



ヒメコ「動くな」



ピタリ!!!

素早く回り込んだヒメコに、影は動きを封じられた。

くそ、なんで。

なんで、一人じゃないんだ。



『いいよ、ヒメコ』

ヒメコ「動いたら顔の皮を剥ぐ」

『ええ怖いよっ!!
剥ぐなら仮面でしょ!!』



影は抵抗する。

だから、なんでなんだ。



『本当の作戦は、後でメールしたの
観念しなさい、ペンキ仮面』



影の心臓は、激しく鳴り響く。

夕暮れに照らされる、男子の制服を纏った女子生徒―――ニックネームの瞳は、真っ直ぐに影を映す。



『ううん、もう分かってるんだよ―――転校生』



ヒメコによって奪われた仮面のしたから、現れ出たのは。



杉原「ち…違いますよ!!
何言ってるんですか!!」



焦りなのか、妙に取り乱した―――杉原だった。



杉原「ボ…ボクは ただ様子を見に…」

『ペンキを持って?』

杉原「!!!」



『ねえ杉原くん、本当は自分でペンキを被ったんじゃないの?
違う?』



暫く杉原は、沈黙を貫いた。