正しい人助けの仕方 | ナノ

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スイッチとメールで会話をしたニックネームとヒメコが、部室に戻って来た。

すると、いつのまにか姿を消していた杉原も居た。



[…という訳で
城ヶ崎が小学校の頃、標的にイタズラをして逃げるという遊びが流行って、問題になったことはあったらしい]

『そうなんだ、
ご苦労さまスイッチ』



城ヶ崎について情報を集めていたスイッチからの情報を聞いて、ニックネームは納得した。

そんなイジメのようなことをゲーム感覚でやっていた過去があるのだから、今回のペンキ仮面も、彼の可能性が高い。



ヒメコ「どや?
何か分かったか?」

『……………』



ヒメコがニックネームに声を掛ける。

しかし話し掛けられたニックネームは、未だに浮かない顔をしていた。



『いや…もう少し
もう少しで繋がりそうなの』



ニックネームはグッとゴーグルを下げた。



『今からそれを繋げる』



(ゴーグルを…?)



ツノのついた赤い帽子に、おもちゃのようなゴーグル。

常にニックネームの頭に乗っているそれは、何の意味があるのか。

ずっと疑問に思っていた杉原は、思わず声に出した。



杉原「あの、繋げるって…何を?」

[今は話しかけない方がいい]

杉原「え?」



ヒメコ「集中モード
ニックネームはゴーグル着けると集中力がごっつ上がりよんねん」



めっちゃ疲れるらしいけどと、心配そうにニックネームを見つめているヒメコに、杉原は首を傾げた。

集中力が上がる?

ただのゴーグルで?

また冗談なんでしょう?

杉原のそんな思いは、真剣な表情でニックネームを見つめるヒメコを見て、何処かへ行ってしまった。



ヒメコ「こん時のニックネームはちょっとスゴイで」



装着!!!



―――――ギュバッ

衝撃が、ニックネームの身体に押し寄せる。

何処かに、身体が持って行かれそうになるのを、ニックネームは必死に堪えた。


―――――フワッ

突如浮遊感に襲われ、別の世界へと飛びだった感覚に陥る。

よし、思い出せ。

今まであったことを、全部思い出すんだ。



キィイイイィン

ボクとしてはあまり、大事にしたくないんです

裏庭の池で鯉を眺めてた

ボクもそう思って、裏庭の警戒をした方がいいと思ったんです

かつてのこの池の様に、鯉(恋)を失ったんだ…とね

小学校の頃、標的にイタズラをして逃げるという遊びが流行って




ニックネームの頭の中に、駆け巡る記憶。

すると、あることに気が付いた。



(何で彼は標的にならなかったの?)










(すごい
ピリピリしてて、完全に集中状態なのが伝わってくる)



ニックネームを見つめるヒメコとスイッチの表情は、何処か心配そうで。

しかし、ニックネームを信じているという自信も感じられるのが、不思議だった。



(あ、そうか)

(やっぱり、わたしの最初の予感は…)



キィイイイィン


―――――ピキン


それは、別世界から帰って来たという合図のよう。

ニックネームの意識が、戻ってくる。


―――――ブルブルッ

ニックネームの身体に震えが走る。

おかえり、わたしの記憶。



―――――ギュバッ

さあ、戻って。



『ぶはぁ!!!
ゲホッケホ』

ヒメコ「ニックネーム!!」

『つ、疲れたあー…!!』



思わず駆け寄ったヒメコを、ニックネームは片手で制した。

強い意志を宿した強い眼差しで、ニックネームは三人を見た。



『作戦を指示する』










『全員帰ってよし!』

ヒメコ「はあ?」


突然、そう言い放ったニックネームには、考えがあったのだが。

そこは敢えて言わなかった。


全ては、事件解決のために。