正しい人助けの仕方 | ナノ

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―――ガラッ



杉原「た、助けて下さい…」

ヒメコ「きゃああああああ!!!」

『血まみれええええ?!!』

杉原「あ…いえ、違います
これペンキなんです」

『ああ、なんだ、ペンキかぁー
ビックリしたぁー…ペンキ!?
何で!?
どうしてそんなんなっちゃったの!!?』



その日の部活動時間、部活棟のスケット団の部室で、ニックネームとヒメコ、スイッチはいつも通りに思い思いのことをしていた。

ヒメコは化粧を直し、ニックネームはヒメコに怒られながらも、諦めずに畳に寝転がり、スイッチはその姿を眺めたり、写真に納めたりと、そんな感じである。

そんな時、転校生の杉原哲平が、スケット団の部室に駆け込んできた。

その時の姿は一見事故に遭ったかのような血まみれ。

誤解したヒメコとニックネームは、思わず叫んでしまった。

だって女の子だもん。



杉原「それが…」



―――裏庭の池で鯉を眺めていたら
   体育館の二階から突然…バチャって…



『…………!!!』

ヒメコ「何やそれ!!
なんちゅーことすんねん!!」



怒りに震えるニックネームとヒメコが、犯人の顔を見なかったか尋ねると、杉原は仮面を被っていたから分からないと言う。



ヒメコ「仮面…!?
そんなモンまでかぶっとんのか
何や気味悪いヤツやな」

『姿を隠して、ペンキかけて逃げる―――ペンキ仮面か』



仮面を被るなんて、顔を見られないようにしていることが明らかである。

ということは、衝動的に起こしたのではなく、計画的な犯行であるのだ。


しかしやられた杉原は転校生。

恨みをかられるようなことがあるとしても、今日は転校してきて初日。

あまりに期間が短すぎる。

そこからニックネームは、犯行は無差別だと判断した。

それを口に出すと、スイッチも同じことを考えていたようで、怒りに震えサイクロンを握り締めていたヒメコに説明をしてくれた。



[もし、無差別の犯行だとすると
第二の犠牲者が出る恐れも考えられるな]

杉原「ボクもそう思って、裏庭の警戒をした方がいいと思ったんです」



しかしその時ニックネームは、一つ疑問を持った。

転校生が来たその日に問題が起こる。

それは、ただの偶然なのか。

もし、それがただの偶然ではないとしたら…。



―――杉原くんに、何か問題があるのかも…。



考えに没頭し、黙りこんでいたニックネームは、ヒメコに肩を叩かれ、頭を上げた。

それからニックネームは考え過ぎかもしれないと思い返し、皆の話に参加した。

と、いうよりも



杉原「それでそういう役目はまさにスケット団の出番なのかと思って、ここへ来てみたんですけど」



杉原の言葉に、気をとられたのである。

ニックネームが考えていた考えは、強ち間違っていなかったなんて、その時浮かれていたニックネーム達は、知る由も無い。



『分かってるね杉原くん!!!』

ヒメコ「できる子や!!!
この子はできる子や!!」


『分かった!
そのペンキ仮面はスケット団で捜し出してみせるよ!!』



依頼に熱意溢れるニックネームと、犯人に殺意溢れるヒメコ、それに何故かドヤ顔のスイッチ。

杉原はその様子に、慌て口を挟んだ。



杉原「あ…あの!!ちょっと…
お気持ちは嬉しいんですけど
ボクとしてはあまり、大事にしたくないんです…!!

転校早々こんな目に遭わされたなんて話…広まって…ほしくないですし…」



『分かってるよ
わたし達は依頼人のために動くスケット団!!
極秘捜査ならわたし達の十八番だよ
ペンキの事は口外しないで、ちゃんと捜し出すから』



―――任せといて!!



胸を張るその姿に、杉原は安心なのか、全身の緊張が解けた気がした。

しかしまだ、何かが、胸の内に残っていた。

杉原はその正体に、気がつかないフリをした。