正しい人助けの仕方 | ナノ

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中馬「えー と言う訳で
連載一回目のお約束やるぞー
転校生を紹介す…
オイうるせーぞエキストラ!!



騒つく朝の教室内に、中馬の怒鳴り声が響く。

普段から無気力な中馬が珍しくやる気を出しているというのに、二年C組の教室は、いつも通り騒がしかった。



(うぅ〜…き…緊張する…
友達できるかなぁ)



そんな教室の前に立たされているのは、二年C組に転入してきた転校生である。

少し癖のある黒髪に、丸眼鏡。

特に目立った特徴もない、普通の男子生徒だ。



中馬「名前は一回しか言わないから
絶対聞き逃さないように」



何でワンチャンスなんだ?

転校生は疑問を抱いたが、今はそれどころじゃない。

人に与えるイメージは、第一印象が九割を占めると言う。

ここは頑張って、元気な感じをアピールして、好感度を狙わなきゃ。

転校生は拳を握り締め、勇気を振り絞って口を開いた。



「す…杉原哲平です!!
よろしくお願いします!!」

中馬「はい杉原哲平と言います
おめーら仲良くしろよ」



割れんばかりの拍手に包まれた杉原だったが、ワンチャンス宣言をした担任がサラッと二回言ったことに、心の中で突っ込んでいた。

はあ、なんとか成功した。



中馬「よし
じゃあ席は一番後ろな」

杉原「あ、はい」



―――ほれ、その列
何か変な帽子かぶってるヤツ居るだろ



担任に言われた通り、教室内に目を向けた杉原は、担任の言った通り、変な帽子を被った生徒を見つけた。

ああ、この列か。

理解した杉原が席に向かって歩きだそうとした時、がたんと音を立てて―――担任に指をさされた生徒が立ち上がった。

ぷーっと頬を膨らまし、明らかに不機嫌ですと顔に書いてあるその女子生徒は、担任に向かって怒り始めた。



『チュウさん、
だからコレは変な帽子じゃないってば!』

中馬「ああ?十分変だろうが」

『これはわたしのトレードマークなの!
馬鹿にしないで!』

中馬「はいはい、分かった分かった」

『ホントに分かってる?!』



そのやり取りは、このクラスにとって日常的なもののようで、笑う生徒、あまり気にしていない生徒等、様々だった。

しかし杉原の頭の中には、この女子生徒がクラスのムードメーカーなんだとその時インプットされた。

まあ、強ち間違ってはいなかったが。

席に向かって、改めて歩きだした杉原に、とある生徒の視線が集まっていたなんて、その時杉原は気が付かなかった。

おそらく、新しい生活に心を躍らせていたからであろう。