正しい人助けの仕方 | ナノ

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―――とある日。


スケット団の部室に、一つの依頼と共に、一匹の猿が届けられた。

名前はイエティ。

珍しいシロテテナガザルの雄らしい。

飼い主―――もとい依頼主は、ニックネーム達と同じクラスのヤバ沢萌。

スケット団への依頼が最も多い人で、ニックネーム達からすればいい顧客なのだが―――毎回、厄介な依頼ばかり持ち込んでくる人でもあった。



ヤバ沢の話によると、両親が旅行で家をあけているため、イエティだけを家に置いておくのがヤバイと感じたらしい。

しかし、部活をしている間はどうしても面倒を見ることが出来ない。

だから、スケット団に預かって貰いに来たそうだ。



ヤバ沢「じゃあ後はヨロシクね」

『いやいやいや!!!
おかしいよ!?いくらスケット団でも、お猿さんなんて預かれないよ!!』

ヤバ沢「ちょっとぉ だってスケット団でしょ?
困ってる人を助けるんじゃないの?」

『いや、そうだけど…』



看板に偽りあり?とまで言われてしまえば、ニックネームは引き受けるしかなくなってしまった。

気が重い。

人間の子どもの相手ですら得意とは言えないのに。

猿って、猿ってちょっと。

ヤバ沢の言葉を借りれば、ちょーヤバくない?な感じである。

哀愁を漂わせ、下を向いてしまったニックネームの背中には、自信がありませんと書いてある気がした。

しゃーない、ヒメコはイエティを抱き寄せて、ニックネームに話し掛けた。



ヒメコ「これでもアタシ、動物めっちゃ好きやねんで
ダテに自然を愛するヒメ姉様、呼ばれてへんわ」

『え?そうなの?
聞いたことないけど…』

ヒメコ「だ、大丈夫、怖くない」



自分にも言い聞かせるように呟いたヒメコ。

でも少し希望の光が、見えたかな。

ヒメコの気遣いに気が付いたニックネームは、頑張ろうと拳を握り締めた。

それを見て、ヒメコも安心したようだったが



―――ムニ、という変な感覚がした。



なんだ、と下を向いてみれば、イエティが満足そうに、ヒメコの胸を触っているのが見えた。

あったまきた。

その後のヒメコの行動には、迷いがなかった。

履いていた上履きで、一発。

スパーンといい音が、部室に響いた。



『ヒ、ヒメ姉様ーー!!!!
依頼人の前で何やってるの!!!』



思わず制止に入るニックネームだが、関係ないとヒメコは言い張るし、ヤバ沢はショックと驚きのあまりに倒れてしまった。

あーあ、なんかいろいろ大変なことになってきた。

ニックネームが頭を抱えたときだった。



―――ガラッ



「ビークワイエット!!!静かにしたまえ!!!
ここは動物園か!!?」


英語教師の金城が、騒音ばかり発するスケット団の部室に入り込んで来たのである。

顔には明らかに不機嫌と書いてある。

ああ、また面倒なのが増えた。

ニックネームはさらに頭を抱えた。