50000! | ナノ






放課後、夕陽が教室の窓から射し込んで、教室内に幻想的な影と雰囲気を作る。
日中の暖かい陽に照らされた光景と同じには感じられないくらい、別の空間のような気がして、少し不思議な感覚に陥る。



「…………、」
「え?間違ってた?!」
「……まあ、合格だな」
「よ、よかったあー…」



静かな雰囲気で、冷暖房完備の図書室ではなく、あえて教室を勉強場所に選んだのには、もちろん訳がある。
雷門の知性である、雷門夏未を超えて、学年の主席になった鬼道は、帝国学園からの転入生なのだから、もちろん頭がいい。
頭がいいし、教え方も上手い。
それに運動神経も良くて、顔も整っている。
もう、否の打ち所がない、完璧な人間。
でも、そういうと鬼道は怒る。
謙遜、というヤツだ。
やっぱりすごい人は、自慢をしたりしない。
だから余計に、すごい。

わたしはそんな鬼道の彼女なわけだけど、わたしは彼に釣り合うような美人でも秀才でもない。
普通に失敗だって、嫉妬だってする。
重たいかもしれない、と、以前口に出したとき、すぐに「構わない」と答えてくれた鬼道のあの時の顔は、今でも覚えているけど。
やっぱり、わたしには鬼道は勿体ないと思う。
でも、少しでも話をしたいし、一緒に居たいわけだから、わたしはあえて放課後の教室を指定したのだ。



「ありがとう、鬼道
すっごく分かりやすかった」
「……なまえが努力したからだろう」
「んーん、鬼道が居なかったら
絶対分からないままだったもん」



付き合って間もない頃は、わたしと鬼道のことを批判する人がいた。
そりゃ、鬼道はかっこいいし。
わたしと釣り合っていないことくらいは分かってる。
でも、最近は受け入れてくれる人もいる。
友達曰く、鬼道はわたしに対して、明らかに他とは違う態度をとるのが見え見えなんだそうだ。
「愛されてるね」なんて、言われたわたしは、気がつかないうちに顔を真っ赤に染め上げていたらしいけど、実は少しだけ誇らしかった。
そんな友達に、聞かれて、凄く戸惑ったことがある。



「うーん、」
「‥どうかしたか?」
「目?顔? …それもそうだけど、なんか違うなあ」
「なまえ?」



「そんなに見つめられると、照れるんだが」と、鬼道は視線をそらしてしまった。
あ、ちょっとこっち向いてよ。



「友達にさ、鬼道の一番好きなところを聞かれたの」
「!」
「鬼道のいいところなら、たくさんあるでしょう?
勉強ができるところでしょ、運動神経がいいところでしょ、」



「気遣いできるところ、優しいところ、かっこいいところ…」



鬼道のいいところを挙げていくと、キリがない。
だから、口からどんどん出てくる。



「それから……」
「も、もういい」
「え?なんで?」
「は、恥ずかしいだろ‥‥」



鬼道は顔を赤くして、下を向いてしまった。
いいところ、好きなところなんてありすぎて分からない。
一番、かあ。
なんだろう、わたしは鬼道のなにが一番好きなんだろう…?



「もう勘弁してくれ、なまえ」



呟くような小さな声がしたけど、わたしは大好きな人の声を聞き逃すわけがない。
誰の声がしても、鬼道の声だけを聞く自信はある。
………なんか今わたし、気持ち悪かった。
でも…



「……、分かった」
「?」
「声だ、声
鬼道の声が一番好き」



「特に、わたしの名前を呼ぶときの鬼道の声が一番好き」



そう、答えを出すと、鬼道は一瞬驚いたように目を見開いた。
言ってから恥ずかしくなったわたしは、勉強道具を片付けはじめたのだけど、鬼道は席から離れたようで、余計に視界から外れた。



「なまえ、」
「!
ちょ、ちょっと耳元は……!」
「何回でも呼んでやる」
「うわあ、ちょっと本当に勘弁して…!」



どうやら、鬼道の気に触ってしまったようで、いたずらっ子のような笑みを浮かべて、鬼道はわたしの耳元で呟き始めた。
わたし、本当に耳弱いんだってば。
ま、こんなことを知っているのは鬼道くらいだし、わざとやっているのは分かってるけど、本気で拒めないわたしは、相当鬼道に惚れ込んでいるからで。



「なまえ、」
「……、」



たまにはこうやって、馬鹿みたいにふざけあってもいいよね?










わたしの幸せを支配する










遅くなってしまって申し訳ありません゜。(p>∧
しかし、…このバカップルが!

なんか気持ち悪い……

鬼道さんの格好よさが激減してしまっていて、すみません…!
イナGO!で、早く大人鬼道さんが見れますように!

もうごめんなさい、かなりお待たせしたのに、こんなダメ文で…!

よ、よろしかったらこれからもNero e biancoと時松杏をよろしくお願いします。


お題:alkalismさまより


11_06_25