50000! | ナノ
※小鳥遊成り代わり・女主





練習後、ボールをキープしながら、息が切れるのも構わずに、フィールド内を走り回っていた時だった。

さっきまでは帯屋とか比得に相手をしてもらっていたけど、やっぱり1人でやるのが性にあっている。

帯屋はぬかるんだグラウンドでも安定した走りが出来るもんだから、どんなにチャージを仕掛けたって避けられるし、弥谷はマークがうざいし、郷院はあの巨体でチャージをかけてくるもんだから、たまったもんじゃない。

竺和は絶対ターンでかわされるし、目座には何を仕掛けたってかわされるし、日柄はタフだから、いくら攻撃を仕掛けたって怯まないし、比得は……もう嫌、悲しくなってきた。

あいつらは加減というものを知らないから、話にならない。

はいはい、どうせわたしは男同然ですよ。

いくら闇に落ちた真帝国学園の生徒だからって、女の子の扱いも知らないなんて、腹が立ってしょうがない。

練習の時にいつもドリンクとかタオルとか、怪我の介抱だってしてあげてるのは一体何処の誰だと思ってるのよ。



「よお、小鳥遊チャン
遅くまで練習熱心だなあ?」
「……不動、」
「おいおい、キャプテンにその態度はないんじゃねえの?
女のくせに、愛嬌ねえなあ?」
「……分かってるわよ」
「へえ?」



例え、日本や世界を敵にまわそうとも、わたしを率いれてくれたこのチームを裏切る気はない。

わたしこう見えて、情に熱いんだから。

でも、どうしてもこのキャプテンだけは気に入らない。

いちいちつっかかってくんなっつーの。

わたしみたいな女がいるのが気に食わないかもしれないけど、この真帝国のメンバーを選んで引き抜いたのは不動だっていうし、何か考えがあるんだろうけど。

まあ、わたしには関係ない。



ナイター設備の整っている真帝国のフィールドだけど、流石に日が落ちてだいぶ経ってしまったから、止めたほうがいいかもしれない。

わたしの胸元で怪しく光を放つ、紫色のヤツを冷ややかな視線で射た不動―――いや、キャプテンは少しだけ悲しそうな顔をした。

気のせい、だろうか。



足元のボールを蹴りあげて両手で掴み、小脇に抱えると、わたしはフィールドを離れる。

わたしのことなんて心配してくれる人はいないけど、家に帰らなきゃ。



「おい、帰るのか」
「…そうだけど、」



またキャプテンが話し掛けてきたのかと思って振り替えれば、銀髪がナイターの照明に照らされて輝いていた。

確か、最近加入したFWだ。

帝国学園から、来たって言ってた。

相当、あの総帥とかいう人に思い入れがあるらしい。

まあ、わたしには関係ないけど。



「おい不動、小鳥遊引き止めといてくれって頼んだだろ?」
「はっ
そーいうことは自分でやるんだな」
「…………なに、わたしになんか用?」



新しい必殺技を完成させなきゃいけないんだけど、いまいちピンとこなくてさ。



「…で?」
「だ、だから小鳥遊にアドバイスを貰いたいな、と」
「別にわたしじゃなくたって誰でもいいじゃない
そこの人が暇してるみたいだから、頼んでみたら?」
「あん?誰が暇だと誰が
俺様はなあ、勝手に練習して無茶しやがる連中をちゃんとまとめて躾けなきゃいけねえの
分かったか?かなり忙しいんだぜ?誰かさんのせいで」
「へえ、」



あからさまに興味が無いことを示すように、適当に吐き捨てれば、不動の眉間に皺が寄る。

やば、怒らせちゃった。



「やっぱ面白いな、お前
不動にくってかかるなんて」
「は?あんたなに、さっきから馴れ馴れしいんだけど」
「俺?
あれ、この間チームの前で自己紹介しなかったっけ?」
「小鳥遊チャンは音楽聞いてたもんなあ?」
「……なんで知ってんの」
「明らかにチームの輪から外れて座ってたからなあ、見ちまったんだよ」
「それは残念」
「没収するからな?」
「ふざけんな、練習中は聞いてないんだからいいでしょ」
「生意気なこと言うもんじゃねえぜ?」
「! カバン漁るなんてサイテー!」
「ちょ、俺のこと無視かよ!」



はあ、ほんとに調子狂う。

わたし、結構口が立つ方だから、男子でもわたしに勝てなかったのに。

何よ、ムカつく。



「佐久間次郎、な
俺の名前!」
「別に聞いてない」
「え、ひど」
「……、帰っていい?」
「ちょ、ちょっとでいいから!
ほんの一回見てくれるだけで!」
「‥はあ、あんたくどい」



しょうがないから、ボールを膝の上に置いて、ベンチに腰を掛けると、何故か隣に気配があった。



「源田、幸次郎な」
「だから別に聞いてないっての」
「まあまあ、そういうなよ」
「小鳥遊チャンは愛嬌ねえからなあ?」
「…しね」
「不動と小鳥遊は仲がいいんだな」
「どこが!まじで不動消えろ」
「ああ?ここで大事なプレーヤーへし折ってやったっていいんだぜ?」
「ッ、サイテー」
「は、なんとでもいいな」



―――皇帝ペンギン一号、

確か‥佐久間、がそう言っていた技は、かなり体力を消耗する技らしい。



はあ、馬鹿らしい。

総帥に命じられて習得しなきゃいけないだって?

だから何よ。

わたし、強いものは好きだけど、ああやって人の為に尽くしたり、身体を馬鹿みたいに削ってまで戦いたくはない。



ほんとに意味がわからない。

やってることはサイテーなのに、輝いて見えるなんて。



あの不動だって、ぽろっと出ちゃっただけだろうけど、わたしのことを「無茶するヤツ」って言ってた。

不動が言った通り、毎日居残り練習をしてるのはわたし。

次の日に疲れが出てしまって、皆にカバーをしてもらうのはわたしだ。

でも、こんなひねくれた性格のわたしが、上手くあ、ありがとうとか言えるわけがないし。

それを分かって、一緒に練習に付き合ってくれるあいつらもあいつらもだし。

まあ、相変わらずわたしのことを女として見てはいないようだけど。



「あー、もうあんたたちといると調子狂うわ」
「へえ?それはどうも」
「なあ小鳥遊、どうだった?」
「うるさいわね、とっととクールダウンしてきなさいよ!」
「佐久間のこと、心配してんの小鳥遊チャン?」
「は、誰がよ
怪我なんてされて、チームに影響が出たら困るからよ」
「はっ、本当素直じゃねえなあ」
「小鳥遊もしっかりクールダウンしておけよ
ほら、タオル貸してやるから汗も拭け」
「! わ、分かってるわよ」










傷にしみるチョコレート

不器用なわたしには、わたしなりの感謝の仕方がある。





小鳥遊忍ちゃんといえば、ツンデレかと。
素直にありがとうとか、心配したとか言えないけど、根は優しい女の子だと思います。
ちゃんとチームのメンバーの名前は覚えてるけど、恥ずかしくてあんたとかあいつらとか言っちゃうんだと思う。

夢、って感じじゃないですよね…ごめんなさい。
何故か源田くんまで出てきました(;´∀`)
わたしの中では佐久間はヘタレなので、真帝国でもあんまり変わらないかなあと。
ちなみにこの小鳥遊ちゃんは鈍感です。

物凄く自己満足ですみません(m´・ω・`)m

これからもNero e biancoを御贔屓にしてくださるとありがたいです。
たまにでいいので時松杏にも応援を((殴

ありがとうございました!


お題:alkalismさまより


11_06_05