成り代わり! | ナノ
※狩屋成り代わり・女主





「狩屋ァアアアーー!!」
「こ、怖いですよぉお霧野センパイィイイ?!!」



お約束とでも言わんばかりに、狩屋なまえと霧野蘭丸は自他共に認める―――――俗に言う犬猿の仲というヤツである。

基本的に面白い事が大好きでイタズラ好きな狩屋に、霧野が振り回される。

若しくは霧野がキレるというツーパターンなのだが、いつ見ても面白い、というのは傍観者の意見である。



「霧野センパイ、」



肩の辺りで揃えられた水色に少し緑掛かった髪は、毛先にかけてかわいらしくカールしていて。

垂れ目で遠慮がちに弱々しく微笑む姿には、自身の童顔も影響して、愛くるしいほど。

―――――狩屋なまえはかわいい。

それが、誰もが狩屋に対して抱く、第一印象である。



「どうした、狩屋」
「あ、あの…その、」
「早く立て、もう一回やるぞ」
「じ、実は…さっき倒れた時に…あし、挫いちゃった、みたいで…」
「なに?!」



本心は、練習に疲れた。

たったそれだけで、休む口実を怪我だと偽って、狩屋は辛そうな顔をしていた。

本当に、芸達者だと思う。

霧野が狩屋は天性の嘘つきであると理解したのは、つい最近のことである。

今日の嘘はこれで5回目。

何人かには既にバレているようだが、霧野だけは完全に本心なのか嘘なのかを見破れるようになっていた。

ポジションが同じで、関わることが多いからだろう。



いや、多分それだけじゃない。



「はあ………ほら、立たせてやる
一回保健室まで行くぞ」



狩屋が嘘をつき始めたら、そう簡単には気分は変わらない。

慣れなのか、霧野はそれを分かっているから何も言わず、狩屋に手を差し出した。

はあ、朝練時に鬼ごっこ擬いな説教をしたばかりなのに。

もう一回やればいいって?

そんな馬鹿な。

いい加減にそれも疲れた。

今まででかなりの数、やってきたんだから。

それでも埒があかないのは、狩屋が懲りないから。

ムキになって怒る霧野が面白いから、狩屋は懲りずにイタズラと嘘を繰り返しているなんて、霧野は知らないのだが。



しょうがないから、今回くらい嘘に付き合ってやるか。

霧野に素直に従って立ち上がった狩屋は、まだ辛そうな顔をしていて。

あー、なんかムカつくなあ。

見た目はかわいいけど。

オレばっかり気を遣って、馬鹿みたいだ。

そんなとき、霧野の頭に面白いことが浮かんだ。

霧野は迷わず脳内の実行ボタンを押した。



「狩屋が脚挫いたらしいので、保健室連れていきます」
「ああ、分かった
頼んだぞ、霧野」
「ッ?!!き、霧野センパイ?!」
「挫いたなら歩けないだろう、」
「だ、大丈夫ですよ、自分で、…!」



狩屋を姫抱きにして、霧野はグラウンドを後にした。

狩屋がぽかぽかと殴ってくるが、そんなことはお構い無し。

そんなかわいらしい攻撃なんて、霧野に与えるダメージはゼロ。

おっと、しかし狩屋には心に20のダメージが。

ちょっと調子にのり過ぎたかなあ。

今回もまた、かるーく受け流されると思ってたのに。

後悔先に立たずとは、まさにこのことである。



霧野の足は、迷うことなく保健室へ向かっている。

それは、狩屋が保健室まで姫抱きで連れていかれている、ということである。

は、恥ずかしくて堪んない。

ちょ、マジで勘弁してください。

ダメージ20どころじゃないかもなあ。



「き、霧野センパイ…」
「なんだ?
あ、結構足、痛むか?」
「い、いや、そうじゃなくて…」



くそ、この人マジで反撃してきてるじゃん。

霧野から顔を反らして、明らかに顔を歪めた狩屋を見て、霧野はふっと満足気にニヒルな笑みを浮かべた。



「もう、いいですってば」
「………狩屋がやり始めたんだから、最後まで責任とれ」
「責任も何もないですよ
なんでセンパイ、」
「受け流されると思ったんだろ?」
「うぐ、」



素に戻った狩屋は、ぷーっと頬を膨らませると、霧野から顔を反らした。

案外幼稚な面があったりして、なんだよコイツ、かわいいじゃないか。



ん?

オレは今、何を考えた?



霧野は、頭の中に浮かんだそれを振り払おうとするように、頭を振った。



「どうかしました?センパイ
遂に頭イカれちゃいました?」
「ち、違う!」
「必死なとこ、怪しいですよー?」
「………お前、このまま落とすぞ」
「別に大丈夫ですよー?
わたしフィジカル強いんで」



可愛げのないヤツだな、と霧野が言えば、じゃあぶりっ子しましょうか?と返す狩屋。

それはそれで可愛いのだが、うーん。

だから、オレは何を考えてるんだよ。



「ったく、」
「「調子狂うなあ…」」
「え?」
「あ、…」










実は仲良しだったりしてー!



(もうあんたらくっついちゃえよ)
(は、浜野ッ?!!)
(お似合いだと思うよー?)
(浜野センパイッ?!!)
(さっきから見てるこっちがムカつくってのー)
(浜野くん、それは個人的な嫉妬ですね)
(バ、バレたかー)
(おいお前たち!皆で保健室に行かなくてもいいだろ!)
(ちぇーっ、やっと面白くなってきたのにー)
((面白くない!!/です!!))







お待たせしました!
えっと、全然いちゃついてないですよね、すみません。
狩屋のキャラがいまいち掴めてなくて…言い訳ですよね、はい。
もっと頑張ります…!文才欲しい…!!

リクエストありがとうございます!2周年企画:グミさまのみフリーです。
こんな管理人ですが、これからもNero e biancoをよろしくお願いします。



お題:alkalismさまより


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