中篇 | ナノ

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次のクラスでも、自己紹介を失敗したわたしは、職員室のデスクの下に隠れてしまいたいくらい、落ち込んでいた。

担任の二人の先生は、励ますように肩を叩いてくれたけれど。

失敗は失敗なのだから。

もう、後の祭りである。



授業で挽回するしかない、とわたしは担当教科の理科の教科書を握りしめ、パソコンを立ち上げた。

わたしは一年生の半分のクラスの理科を担当する。

その担当クラスに、わたしが副担任をする二クラスも含まれるのだから、余計気合いを入れなくてはいけない。

えっと、わたしはプリントではなくノートを使う授業をしようと思っているわけだから、始めのオリエンテーションの時間くらい、分かりやすいプリントを作って………



「みょうじ先生、ちょっと」



くいくい、と手招きされれば、一番下っ端のわたしは従うしかないわけで。



「はい」



きっと徹夜作業になるだろうな。















「これから部活動についてのプリントを配布します
プリントに部活動の種類が全て記されているので
注意をよく読んで、記入欄に保護者の方のサインも貰って今週中に提出してくださいね」



担任の先生の手が空いていなかったらしく、わたしが始めに自己紹介で失敗したクラスで、いろんなプリントを配ったり、入学後の予定について話すことになった。

結局帰りのHRが終わるまで、わたしはそのクラスにいたのだけど、周りと同じようにはしゃいでいた円堂くんは、部活動のプリントが配られた時から、何処か元気が無くなっていた。

ああ、これから冬海先生のところに直談判しに行くのか。

なんて暢気に考えていたわたしにさえ、数名の生徒は挨拶をしてくれた。



「先生、さようなら」
「はい、さようなら
気をつけて帰ってね」
「はーい」



いい子達だなあ、と感心していると、わたしの目の前でオレンジ色のバンダナからはみ出した髪が揺れていた。



「先生、」



なんと、目の前に円堂くんが居たのだった。

教卓でファイルやプリントを持って、ただ立っていたわたしに、悲しそうな顔で彼は口を開いた。



「先生、サッカー部無いんですか」










躍世界

(相談する相手は、わたしじゃないよ
おかしいな、ストーリーが違う?)