中篇 | ナノ

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「みょうじ先生は、一年生の二クラスの副担任を担当してもらいます」
「はい」


教師一年目のわたしの赴任先に決まったのは、引っ越さなければ通うはずだった雷門中だった。

ストーリーが始まり、主に展開されていく舞台である。

わたしは、自己紹介をするために担任の先生の後を追って教室に向かう中、自分用にと昨夜考えてきた内容を思い出していた。

先に入る担任の先生の自己紹介を聞いてから、わたしは後から入るのだと打ち合せをし、担任の先生は教室に入って行った。

教室からは新入生らしい、元気な声が聞こえる。

呼ばれるまで、まだ時間がある。

少しくらいは覚えれるだろうと、わたしは手に持っていた、先程学年主任の先生から受け取った、二クラス分の名簿に軽く目を通していると、突然その一人の名前に視線が釘付けになった。



円堂守



もしかして、と次の名前を順に追っていくと、どんどん見つかる見覚えのある名前。



染岡竜吾∞半田真一∞木野秋



「みょうじ先生?
あなたの番ですが」
「! …すみません、」



頭が真っ白になったわたしには、昨夜一生懸命に考えた内容は残っていなかった。



「みょうじ なまえです」



だから、生徒に気に入られるような、面白い話も。

何も出来なかったのである。










躍世界

(これは、もう運命なんだろう)