中篇 | ナノ

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「みょうじー」
「…」
「みょうじー、おはよー」
「…?
浜野くん、?」
「よっ
今いい?」
「うん…?」



まあ、みんな同じだと思うけど、休み時間はなまえにとって貴重な時間である。

授業中寝ないように、休み時間のうちに寝ておいたり、忘れないうちにノートまとめをしたり、etc...

なまえが成績を維持出来ているのは、こうした学校での空き時間に、忘れないうちに何かをしておくからである。

なーんて、カッコいいことを言っておく。

ちなみに、今は寝ようとしていた。



「理科持ってない?」
「持ってるけど…何限?」
「3限」
「次じゃん!
わたし、4限だから―――――すぐ返してね」
「さんきゅ!
さっすがみょうじ姉さん!」
「はいはい」



なまえはまたか、と思った。

だから迷わず一式渡すと、浜野はご機嫌で持って行った。


浜野が忘れ物をするのは、しょっちゅうだ。

それで、必ずと言ってもいいほどなまえに借りに来る。

そりゃあ、同じクラスだったら借りれないし、隣のクラスだから借りやすいっていうのもあるだろうけど。

何故、と毎回思う。

でも、浜野のあの無邪気な笑顔を向けられてしまえば、なまえは何も言えなくなるのだけど。

よし、もう一回寝よう。

まだ、5分ある。

なまえが再び机に突っ伏そうとしていた時だった。



「おい、みょうじ」
「?
あ、霧野くん…?」



霧野くんに話し掛けられるなんて、珍しいなあと思いながら、なまえは顔を上げる。

ああ、整った顔してるなあ。

なまえはのんきに眺めていた。



「次移動だぞ」
「ぅえ?!マジで?!」
「ああ、マジで」
「あ、ありがとう霧野くん…!」



どうりで教室には人気がないわけだ。

準備が終わるまで待ってくれて、一緒に行ってくれるなんて。

霧野くん、マジでいい人…!

なまえの中のいい人ホルダに霧野が追加されたのは、言うまでもない。



(霧野遅いぞ、…ってみょうじ?!)
(あ、神童くん
霧野くんお借りしてます)
(………やっぱりみょうじって面白いな)
(そう?)


(おい、遅刻するぞ!)


(やべっ)
(走ろう!)



これがなまえと彼らの初の会話だとか、誰も信じてくれなかった。

そんなに仲よさげに見えたのかなあ?

まあ、嬉しいけど。

なまえは自己解決で済ませた。











SUCCESS!