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薄らと目を開くと、見慣れた天井があった。
朝か、といつものように身体を起こそうとしたとき、嫌な予感が頭を走った。
今、何時なんだろう。
素早く身体を起こし、枕元に置いてある時計を見た。

「え、うそ…」

時計は11時を少し過ぎた頃をさしていた。
信じられなくて、時計を持ち上げよく見ても、針は11と2をさしている。
嗚呼、完璧に寝過ごしてしまった。
どうしよう。
大事な試合前の練習で、絶対に休んではいけないのに。
寝起きであることと、パニックで正常に働かない頭で考えた結果、とりあえず着替えなくてはいけないことに気がついた。
いつもは念入りにコーディネートをするのに、今日はそんなこと、気にしてはいられない。
だけどわたしも女の子だから、迷ってしまって、結局はいつもと同じくらいの時間が過ぎていた。

朝ご飯はどうしようか。
でもお昼の休憩の時間が近いから、財布だけ持っていってみんなと食べよう。
そうだ、そうしよう。
―――――♪〜...

「うわッ」

既に出掛けてしまったのか、家に家族の姿は無く、どうやってチームメイトに謝ろうか考えていたとき、ポケットに入れていた携帯が鳴る。
サッカーの代名詞ともとれるアイーダ、この着信音はオルフェウスの誰かだ。





フィディオ・アルデナ

――――――――――――

散歩中に綺麗な花を見つけ
たんだけど
気がついたら
なまえの家に着いた





なんて口説き文句だろうと思った。
それにしても、練習をしてるはずなのに、なんでメールが来るんだろう。
しかもキャプテンから。
不思議に思いながら、玄関の扉を開けると、案の定爽やかな笑みを浮かべたキャプテンが腕を広げて待っていた。










ひだまりシエスタ










「今日は練習休みだよ、なまえ」
「…さいですか」

手渡しで貰った花。
握り続けるキャプテンの手を、さり気なく解く。
キャプテンに貰った花は、白い小さな花。
控えめなのに本当に綺麗で、可愛い花だった。
丁度飾ってあった花を生けなおそうと思っていたので、花瓶に生けなおした。
急いでいたわたしを不思議に思ったらしいキャプテンに訳を聞かれ、正直に話すと、盛大に笑われた。
そんなに笑わなくたっていいのにと、思わずむくれると、またキャプテンは笑った。

「あ、そうだ
キャプテン、お昼食べました?」
「え? まだだけど」

自分が何も食べていないことに気がつき、冷蔵庫を開けてみた。
すると、オレンジ色の小さな箱を見つけた。
嗚呼、そういえば昨日、お姉ちゃんがバイト先で余ったケーキを貰ってきたって言ってたっけ。
中を開けてみれば、きらきらと甘いソースが輝いていて。
ふわふわの生地からは甘い香りがする。
食べちゃえ。
ティータイムにはまだはやいけれど。
少しでもお腹を満たしたかったわたしは、お皿とフォークを急いで棚から出し、キャプテンの座るソファへ戻る。

「食べませんか
ご飯、ってほどではないですけど」
「ありがとう」

キャプテンは、ミルフィーユを綺麗にフォークで切り、口へと運ぶ。
優しい笑みを浮かべながら食べているのだから、口にあったようで、わたしはほっと一息。
ショートケーキのイチゴをまず一番最初に食べて、ふと気付く。
お茶が、ない。

「紅茶でいいですか?」
「うん」
「えーっと、オレンジペコかアッサムか…」
「アッサムかな」

わたしはティーポットとカップを二つ、急いで取り出した。
ケトルから湯気が出てきたので、ポットにアッサムとお湯を入れて、よく見ながら時間を待つ。
その間に、残ったお湯でカップを温めていると

「砂糖多めで、ミルクティーがいいな」
「あ、はい」

キャプテンの好みを知らないことに気がつき、尋ねようとしたとき、後ろからキャプテンの声がした。
びっくりして、肩が上がる。
あれ、ソファでミルフィーユを食べてたはずなのに。
いつのまにか、わたしの腰に腕が回っている。
「待ちきれなかった」「待たせちゃってすみません」「…いや、そーいうことじゃなくて」キャプテンはいつのまにか探してきたのか、砂糖を持っていた。

「まったく、鈍いよねなまえ」
「え?」
「いや、なんでも」

ケーキを食べ終わったらしいキャプテンは、慣れた手つきで砂糖とミルクを入れる。
イタリアの男は女好きが多い。
だから、誤解しないように、わたしは分かっていても知らないフリをする。

「キャプテン、甘いもの好きですか?」
「うん
…意外だった?」
「いえ、どちらかというと予想道りでした」

素直に答えれば、また笑われる。
キャプテン、今日はよく笑うなあ。
ヒデさんが居なくなってから、今まで以上の沢山の責任感に押しつぶされそうになっていたから、少し安心したかも。

「もう、いつまで笑ってるんですか」
「あははは、怒ってるなまえが可愛いから」
「…そんなことないです」
「なまえ照れてる」
「照れてまーせーんー」










気がつけば、辺りは日が傾き始めていた。
他愛のない話ばかりしていたが、不思議と話題は尽きなかった。
おかしな話だけど、
わたしたちの早めのティータイムとシエスタの時間は、騙し合いの時間なのだ。










フィディオは俺の夫。
甘い感じにしようと思ったのに
杏の中で海外組はタラシのイメージ強しだから((チョ


10_07_19





 
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