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全てのものが白で統一された世界に、彼は生きていた。
天使のように美しい容姿が、その世界では異様な程に目立っている。
シーツの隙間から覗く腕は、少し前までは健康的な、肌の色をしていたのに。
今ではその世界にすっかり染まってしまったかのように、色白に見える。
否、生命が宿っているのかさえ危うい気がする。

「なまえ…?」
「え、ぁう、っ…ご、ごめん、」
「そんな悲しそうな顔、しないでよ」

彼のこんな姿を見たのは、久しぶりだった。
子犬の命を助けるために、彼が自らの身体を傷つけ、仲間の心を傷つけた時、二度とこんなことが起こらないように毎日のように祈ったのに。
彼は自身が傷つく姿を見られることを、頑なに拒んだ。
仲間をこれ以上傷つけないようにと吐いた嘘が、仲間を縛り付けていたなんて、と―――――彼が弱々しく笑ったのは、ほんの少し前のことだ。

「俺はまた、………なまえを、傷つけることしか出来ないんだね」
「かず、くん…」

彼の人生の中で、二度目の手術を終え、早二週間。
未だに身体を動かそうとしても、激痛のあまりにリハビリすら出来ない状態だ。
元々、鍛えられているから筋肉は衰えていないけれど、彼は精神的な面でも痛手を負っているからか―――――成長期の割りに治りが遅いと、医師が言っていた。
前の事故でお世話になっていた先生だから、彼のことも、わたしのことも知っていて、気さくに話してくれるのだけど。

「そんなこと、ないよ」
「でも…!」
「わたし、弱気なかずくんは、嫌いだよ」
「………、」

ベッドの隣に常備された、来客用のパイプ椅子に腰掛けているわたしは、身体を起こして座っている彼を見上げる。
目が合うと、困ったように視線をそらされてしまった。
掛け布団を握り締めるように、堅く握られたその拳は震えていた。
プロユース入りが決まったと、嬉しそうに話してくれたのは、ついこの間だったのに。
本人よりも泣いて喜んだわたしは、その時明るく話してくれたこととは裏腹に、暗い表情をしていた彼に疑問を持ったのだけど。
今思えば、彼は自身の限界を知っていたのではないか、と思う。

「ユースに入ったら、試合に招待してくれるんでしょう?」
「も、もちろんだよ」
「だから、かずくん、そんな悲しそうな顔しないでよ」
「なまえこそ、…」

―――――わたしは慣れてるから。

そう、口から滑り出た言葉に、う、と自分で行き詰った。
しまった。今のはまずかったか。
大丈夫とでも言えばよかったのに。
何で、また彼を責めるようなことしか出ないのか。
顔に出てしまったのか、彼はわたしの方を見て、また悲しそうに笑った。
ぽん、と頭に乗せられた彼の手は、優しく心地よいリズムを刻んでいく。
思わず涙が出た。
あれ、ついこの間まではわたしが慰めてたのに。

「やっぱり俺、なまえじゃなきゃダメだ」
「…え?」
「なまえばっかり傷つけて、ごめんね
でもやっぱり俺にはなまえじゃなきゃダメなんだ」

俺ね、なまえの笑顔が好きなんだ。
だから、絶対、また笑ってもらえるように頑張るから。
だから、まだ俺のこと、嫌いにならないで。

「嫌いになるわけ、ないでしょうが」
「ありがとう
でもね、こんなメンドクサイ俺なんかに構ってないでいいんだよ?」

リズムは途中で途切れて、少し頭の辺りが寒くなったような、感じがした。

「ごめんね、」
「うん?」
「わたしもかずくんじゃなきゃダメだから」
「…そっか」

病院で、笑いあう日があって、それがわたし達の人生の半分以上であったとしても。
また彼が飛び立って行くまで、支えたいと思うのが、わたしであって。
日本で仲間を見つけたニシガキやアキ、再び帰って来たアスカも、自分の居場所がちゃんとある。
マークも、ディランも、みんな大切な人だけど、やっぱりわたしはかずくんの側に居ることわたしが、本当のわたしであって。
わたしの居場所であって。
でもやっぱり、飛び立って行かれたら、悲しくなるのがわたしであって。
それを伝えられないのもわたしであって。

「かずくんこそ、わたしじゃなくたっていいんじゃ…」
「もう、何回言わせるの
俺にはなまえしか…」
「あーあー… 聞こえない」
「そんな、今更照れなくたって」
「なんで無駄にかっこいいんだよお ばかああ」










はかなき創造



マーク、何で止まってるんだい?
いや、今は入らないほうが…ってディラン!
ハイ!カズヤ、なまえ! …あー、そういうこと
俺達、邪魔みたいだから帰るぞ
分かったよマミー!
てめ蹴るぞディラン
Oh! マーク、ドモンがひどいよ!

てめえら早く帰れや!

カズヤ、なまえが絡むと性格変わるよな…










なにが書きたかったのか・・・

ごめんなさい!


お題:alkalismさまより


11_03_11


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