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未だふわふわとした頭の中、ゆっくりとだが段々と覚醒していく意識。
朝だ、起きなくちゃ。
少し布団からはみ出ていた足を引っ込めると、ひんやりと冷たくなっていた。
外は、寒そうだ。
まだ温かさの残る布団から出たくはないけれど、ゆっくりと少しだけ顔を出してみる。
すると直ぐにひやりとした冷たい空気が、わたしの顔を撫でた。
思わずぶるっと、寒さが全身を駆け抜けたのを感じて、わたしは布団の中に深く顔を埋めた。
これじゃあ、いつまで経っても布団から出られない。
そう思ったとき、昨日かけておいた時間を知らせるように、アラームが鳴った。

―――――pipipipipi...

この耳に付く独特の電子音は、どれだけ経ってもどうも気に入らないし、慣れない。
嗚呼、止めないと。
おそるおそる布団から手を伸ばして、目覚まし時計を探す。
するとわたしが触れていないのに、不思議なことにアラームが止まった。
あれ、なんで。

もう一度布団から顔を出してみると、そこにはわたしの目覚まし時計を持って眩しいくらい微笑んでいるナツが居た。










「よお!なまえ」
「どうしたの、ナツ
今日はハッピーはいないんだね」
「おう」

寝る前に鍵をかけておいたはずなのに、わたしの部屋の窓が開いている、ということは、ナツはどうやら此処から入ったらしい。
ナツのことだから、常識を知らないわけで。
でも鍵は壊されていないし、窓も割れた形跡はない。
毎日、物は壊さないように言い続けた結果なのかな。
不法侵入されたわけだけど、いつものことだからか慣れてしまったわたしがいて、まあ破壊されていないだけいいと思った。

「なまえ、今日一緒に仕事行こうぜ」
「今日?
今日…は、確かもう仕事入れちゃったんだけど」
「えー なんでだよー」

ナツは、わたしを仕事に誘うために朝早くから窓の外に潜んでいたようで、小さく震えていた。
だからわたしは部屋に入るように言い、窓をちゃんと閉めて貰った。
しかしそう言われても、とわたしは困って頭をかいた。
するとぶーっと頬を膨らませたナツはベッドの上に座り、わたしをじーっと見つめる。
いい加減、視線が痛くなってきた時だった。
ナツは袖が無い分寒いのか、手で体を擦って暖めていたのだけど、我慢が出来なかったようで、布団に入ってきた。

「ちょ、ナツ…冷たい」
「やっぱあったけーな!
あ、なまえ、とりあえず服着たらどうだ?」

ナツが言った時、わたしはその時初めて気付いた。
わたしは元々、寝るときは下着なのだけど…そうだ、今布団と下着しかきてないからなあ。

「…、……ちょっと、出てってッ」
「別に毎日見てるんだからいいじゃんかよー」
「何言ってんのーッ?!」

からかってくるまだ眠そうなナツは、冷たい体でぎゅーっと抱きついてくる。
嗚呼、だからハッピーと一緒じゃなくてナツだけで来た時は嫌なんだ。
まあ付き合ってるわけだから、抱きついてくるのはいや………なわけでもないけど、まあ、うん。
小さな頃から同じギルドで育ったから、よく一緒に寝たり布団に入ったりしたけど、やっぱり今わたしたちはもう大人になりかけているわけだから。
ナツはどうかは知らないけど、わたしは内心どきどきしっぱなしで、正直心臓が心配だ。

「なあなあー、仕事ー」
「あ、明日なら空いてるから!
とりあえず、離れてよナツッ」
「やだ」
「な、なんで?!」

ナツはわたしの首元に顔を埋め、おとなしくなった。
くすぐったくてわたしは身を少しひくと、ナツは更に腕に力を入れた。
出来れば跡は付けられたくない。
いつもナツは、絶対に見えるとこに付けるから。
ミラさんが言うには、ナツは相当嫉妬深いらしい。
それを聞いたときは、わたしはグレイに敵を倒されてしまい、「いいとこ取り、横取り」されたとナツが怒っていたことを思い出したのだけど、それは違うと言われた。

「なあなまえー」
「ナツ、わたし仕事あるから!」
「…」

微動だにも動こうとしないナツに、わたしは半ば呆れながら頬に一つキスを落として、ナツが固まった隙に素早くベッドから降りた。
それから絶対に振り向かないように言い付けて、わたしはクローゼットから服を一式取り出して、鍵が付いているシャワールームに駆け込んだ。
はあ、困った。
きっとわたしがギルドに行くまで居座る気だ。





―― ― ――
― ――― ―
――― ―――  ――





キッチンで朝ご飯を拵えて、きっとまだベッドの布団の中で蹲っているだろう―――――ナツの元へ運ぶ。
部屋に戻れば、匂いを嗅ぎつけたのか、ナツはベッドの上で行儀よく座っていた。
やっぱり、お腹空いてたんだね。

「はい、ナツ」
「サンキュー」

ひゃっほー!うっまそー!
嬉しそうにトーストとオムレツを口に含み、行儀悪く話す。

「ナツ、こぼしてるよ」
「え?」
「もう、この間ナツのせいでカーテン焦げたばっかりなんだから
あんまり汚さないでよ」
「…ゴクリ)…………おう、悪いな」
「…………あ、また」
「…じゃあ食べさせてくれよ」
「え」

ナツが我儘を言いだしたら、中々ひかないことは分かっているし、一緒に仕事に行けないことが相当ショックなようだし。
わたしはしょうがなく折れて、既に口をあけて待っているナツにオムレツを食べさせてあげる。
すると、珍しくナツは顔を赤く染めた。

あ、そうだった。
ナツは押しに弱いんだった。
自分では必要以上に抱きついてきたり、キスしてきたりするのに、わたしにやられると半端なく照れるのだ。
まあ、そういうところが可愛かったりする。
わたしがたまにしかそういうことをしないことも、影響してるんだろうけど。

「もう、ナツ…早くしないと」
「…お、おう!
行っくぞー!」
「う、…きゃあああッ?!
ちょっとナツ、なんで飛ぶのぉおお?!」

片付けも終わっていないのに、わたしはナツに抱かれて家を飛び出した。
あ、戸締まりしてない。










The Sense of Love

愛の感覚は、きっと人それぞれなんだろうな
わたしはこの照れ屋な彼が可愛くてしょうがない






妖精の尻尾のナツです
結構最初の方からアニメ見てて、すきなんだよなあ


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